奥村和彦(p)安藤 昇(b)伊藤宏樹(ds) 西田千穂(vo)
奥村の来演は相当久し振りのことになるが、ドラムスの伊藤が九州で共演を重ねているので、時折話題になる。思い起こせば、奥村には豪腕系のピアノだというのが初聴きの印象としてある。私たちは演奏家に対するイメージを何となく定着させてしまうのが普通にあるが、耳というのは規律正しくあろうとしない面があって厄介だ。熱演に喝采することもあれば少しやり過ぎと訝ることもあるし、圧倒的な技量に持っていかれることもあれば卓越の度が過ぎて心に響かないと感ずることもある。こうした我儘な感覚を整理するのは鬱陶しいので、演奏家のオリジナリティーに拠りどころを見出すのである。「ああ、あの人の音だ」いうように。奥村の音は以前聴いた印象の延長上にあり、一言では難しいが逞しさを基調にしているように思う。今回の構成は、前・後半ともトリオで2曲のあとにヴォーカルが入るというものである。そのトリオを聴いていると、ヴォーカルが押し込まれてしまうのでは、と思ったりもしていた。ところが西田(鹿児島出身で九州を舞台に活躍の場にしている)の堂々たる歌唱は、何ら後ろに引けを取らない堂々たるものであった。そして少しハスキーな声質は、Trio+1に+αの役割を提供していたように思う。演奏曲はTrioがオリジナル3曲に「「There will never be another you」、歌が入って「Lousiana Sunday Afternoon」、「For All I Know」、「Gee Baby,Ain’t I Good To You」、「That’s Life」、「Here’s To Life」、「My Favorite Things」、「What A Wonderful World」。
失礼ながら、予想外の素晴らしさに「帰れ、帰れ!」のシュプレヒコールが沸き起こり、薩摩の芋味はレイジーのいも美を凌ぐほどであったことを付け加えて置かなければなりもはん。
(M・Flanagan)