一度思い出し始めると止めどがなくなる。曲はCジヤムブルースであった。リズムセクションがステージで待機している。そこに後部の入り口からホーン4人が客席の間を練り歩きながらワールドサキソホーンカルテットの様なノリで入ってくる。ホーンセクションがステージにのったらリズムセクションも加わり強力にスイングするという構想であった。だがここに思わぬ穴が有った。サックス主任であるS名を先頭に練り歩くという予定であったが、Cジャムブルースのテーマダダッ、と吹くとそこでS名は「達磨さんころんだ」の遊びの様にその都度止まってしまいホーン奏者の接触事故が多発した。普通に歩きながら吹けないという。その日ホーンセクションだけ残し歩きながら吹く練習をした。それを考えると一糸乱れず行進する高校生のマーチングバンドを見るとひれ伏すのである。僕の構想は色物を出しながらメンバー、お客さんの目先を変えながら長期的にはちゃんとした主流派の音楽の腕を磨くというものであった。だが一度色物に手を出すとヤクに手を出したクレィジーキャッツの様にそちらの方のネタを考えるのである。臼庭潤がゲストの時ラップに手を出してしまった。モンクのベムシャスイングにのせて僕がラップをするという企画であった。ラップを舐めくさっていた。酔った時の駄洒落の様にそれくらい湧いて出てくると考えていた。出だしだけ考えジャズ的偶然性にまかすという愚挙に出てしまった。一応予防線は張っていた。臼庭には「ベムシャスイング」と言ったら「私困ってます」という意味なので後埋めてテーマに戻ってもらうという傷害保険を掛けていた。
割と早めに日本生命に保険申請したのだがその「ベムシャスイング」の声が南州太郎の様にひっくり返ってしまった。その事を臼庭が亡くなるまでネタにされてしまった。
ネタニナル首相、臼庭にユスラレル
