日本映画探訪記その4 黒いドレスの女

角川映画である。僕が見る原田知世主演作3本目になる。これを見ると原田知世とのお別れになる予感がしていた。原作は北方謙三。今は歴史ものとか中国物を書いているがデビュー当時はハードボイルド小説の旗手であった。このタイトルは推測であるが「白いドレスの女」を意識している。キャサリン・ターナーの主演で映画化されている。キャサリン・ターナーが謎めいてエロくて、本当に悪である。相手役のウィリアム・ハートは手玉に取られてしまう。
ドレスの色が変わる。黒い方である。映画の冒頭黒いドレスを着た女がバーに入ってくる。
「座っていいかしら」
「どうぞ」女は煙草に火を着け、マルガリータを頼む。煙草を一服してマルガリータを一口飲む。
「このペンダント貰ったの」
まあ、こんな感じで映画が始まる。原田知世がミステリアスな女を演じているつもりだ。髪型も肩までの長さで軽くウエーブが掛かっている。はっきり言って髪型も服もまるで似合っていない。勿論謎めいた女には全く見えない。たばこの吸い方も育ちの良いお嬢様がちょっといたずらしてみましたという感じだ。それにショートカクテルは両手で飲むものではない。
普通の映画会社ならミスキャストだ。ところが角川映画である。角川春樹が原田知世に大人の女を演じさせてほしいという意向だったのだと思う。監督は崔洋一だ。日本映画は50年代が黄金期で60年からは衰退期に入っていた。新人にはなかなかメガフォンを握る機会はやってこなかった。角川映画の功罪の功を上げればそういう若い映画人にメガフォンを取らせたことだ。崔監督もその一人である。
冒頭のシーン。僕には中学の学芸会にしか見えないのだが崔監督はどうしてああいう演出にしたのであろうかと考えるのである。崔監督も原田知世の演技力の無さはすぐにわかるはずだ。
指導してどうにかなるレベルではない。そこを逆手に取ったのではないか。どう見てもヤクザ者と渡り合うタイプには見えないようにして周りの人間そして観客もだます。
アイドルでデビューした人間は必ず演技派に脱皮していく時に壁にぶつかる。フアンであればそこまで付き合うのであろうが僕にはそこまでの時間の余裕がない。さようなら原田知世。
付記
ビデオには特典映像が付いていて映画のパンフレットが見られる。映画はタイトルが流れる前原田知世が高速道路を歩くシーンから始まる。パンフレットには原田知世が裸足で高速道路を歩くシーンから始まるとあるがちゃんと靴を履いている。