泡盛vol3

羊田メイ、24歳。24歳だったというべきかな。もう死んでいるから何歳と言ったらいいのかよくわからないな。しばらくぶりだから私のこと覚えていないかな。石垣島のバーでマスターが片足のないお姉さんとお話ししていた時グラスを倒す悪戯をした娘だよ。生きていたころの話していい?楽しかったのと大変だったのが半々かな。カクテルのレパートリーがだんだん増えていくとなんか賢くなったような気がしたな。お客さんも女の子が手際よくシェイカー振ると喜ぶんだ。味・・・・悪くないと言われていたよ。パパはあまり褒めてくれなかったけど。ああパパってマスターのあだ名、私がつけたんだ。常連の人からは店ではマスターって呼んだ方が良いと何度も注意されたけど結局治らなかった。パパもあきらめたみたいだったし。お客さんは親子だと思う人もいたけど若い愛人だと思う人もいたみたい。そういう人って男と女の関係って一種類しかないって思っているんだよね。でもそういうお客さんって売上的には良いお客さんになってくれるんだよ。高いお酒進めても気前よく飲んでくれるしチップをくれるときもある。私目当てだからちょっと可愛い事言ったりしたよ。商売商売。パパはあまり商売けがなかったから、そういう時は私が稼いでいたよ。可愛いのかって。失礼よ。自分でも美人だとは思っていないけど人から言われるとむかつく。訂正腹が立つ。ムカつくって言うとパパ怒るんだ。ちょっと目が離れて,鼻は申し訳程度についている。でも愛嬌がある顔だって言われるよ。こういう商売は私ぐらいの器量がいいんだって。手が届く近所のお姉さんと言う感じ。そう、あまり綺麗だとお客さん同士で抑止力が働くらしいよ。
今日はちょっと店の様子を見に来たんだけどライブのない日は相変わらず暇そうだね。お客さん新ちゃんだけじゃない。新ちゃんって一緒に石垣島に行った子、パパの舎弟分みたいな存在でギターリストなの。私とは話あうよ。パンクロックの話で盛り上がったこともある。
「新、今日はおごるよ」
「マスターいいんですか、今月辛いんで助かります」
ああ、パパまた新ちゃんに泡盛奢っている。自分だって辛いはずなのにかっこつけている。
何の話かな・・・・・また音楽談義だ。この話になると長いから、私そろそろ行かないと。私の話でないみたいだね。新ちゃん帰っちゃったね。
パパ、メール書いている。見ちゃおうっと!
「新、メイが生きていた時間までいてくれてありがとう」
返信が来た
「メイちゃんの話しなかったですね」
二人とも私の命日覚えているんだ。パパったら新ちゃんと私の話したいくせに無理してる