2017.3.31-4.1  Another Standards

若井俊也(b)赤坂拓也(p)西村匠平(ds)
LBの直近blogは「四月は残酷な月だ」というTSエリオットの詩集「荒地」の引用から書き始められている。4月とは3月のリバウンドが襲う放心の月という主旨である。偶然にも今回のライブは3月と4月をまたぐ日程となっていた。若井に限るとここ数年来聴く機会に恵まれており、その可能性に強く惹かれているが、赤坂と西村そしてこのトリオは初めてだ。
何の予備情報もなく聴き始めることになった。最初は確かC・ポーターの曲だったと思うが、瞬時に感じたのはバランスの良さだ。これは彼らが等しく昭和の終期に誕生しているという同世代的共鳴によるものではない。三者対等のインタープレイを追求する意識が明確に内在化されているからだ。聞くところによると、彼らは必ず後日反省会を行っているという。ピアノ・トリオの自己検証を重要な音楽活動としているのだ。語れば理屈っぽくなるが、そうした真摯な姿勢がサウンドに転化されていることが確かめられる。彼らは腕の立つ連中であるが、引き出しの多様さに依拠せず、むしろ感性の赴くままに演奏する方向に進むことを狙っているのではないかと思う。そこにしか無いグルーブ感を筆者は受け取ることができた。演奏曲は、「サマー・ナイト」「ハウ・マイ・ハート・シングス」「ローンズ」「コルコバード」「エブリシング・マスト・チェンジ」「アイ・ミーン・ユー」「ベリー・アーリー」「リトル・サンフラワー」「オレンジ・ワズ・ザ・カラー・オブ・ハー・ドレス」「ジス・ワンズ・フォー・バド」「フォーカス・セカス」など。ピアノが唸り声を出さないという意味で、“Another Standards”と云っておく。
結局、“残酷さ”は後退し、ご機嫌な“I remember April”をゲット。4月1日、嘘はない。
(M・Flanagan)
あああ