日本映画探訪記その3 聖の青春

薬師丸ひろこと原田知世には今回休んでもらう。
藤井聡太がとうとう棋聖位を獲得した。まだ17歳である。藤井聡太の人気で将棋に興味を持つ人が増えた。一将棋フアンとしてはうれしい限りである。藤井聡太の前にも何人かの天才棋士がいた。村山聖もその一人である。村山は羽生善治との勝負に命を懸けていた。羽生との将棋1局はほかの人と指す20局分に相当すると公言してはばからない人であった。小さい頃かネフローゼの持病もちで将棋を指すことは相手との戦いでもあり体力勝負の自分との戦いでもあった。29歳で名人にも挑戦できる順位戦のA級に上り詰めていた。だが羽生との名人戦を戦う前に夭折した。そんな棋士村山聖の伝記、大崎善生「聖の青春」の映画化である。実在の棋士が多数出てくるがキャラクターなどもちゃんと研究して作られている。特に羽生善治は表情、対局姿勢、物言い、服装までかなり似ている。村山と羽生の駒あしらいと言ったらいいのだろうか・・・指先の表情まで気配りが行き届いている。
実際の村山聖は変人タイプであったがその終盤力には定評があってプロ棋士の間でも「終盤は村山に聞け」と言うセリフが流行っていた。将棋が強いと言う事は終盤が強いと言う事であると思っている。藤井聡太もそうであるが相手王に積み筋がある時は消して見逃さない。そして終盤の局面を想像しながら序盤から駒組をする。積んでいるエンジンが違うのである。
僕の棋力はアマ2段くらいだと思うがこのクラスの人の指し手は意味が分からないことが多い。米木のソロのようだと言えばjazzフアンにはわかりやすいかもしれない。
将棋はパソコンでやるゲームの何倍も深いと思っているのでこの映画を見て将棋フアンが増えてくれると嬉しい。
だがその前にjazzファンが増えてくれないと困る。
付記
大崎善生は札幌出身の作家で切ない恋愛小説が多い。「別れの後の静かな午後」は札幌オリンピックの時代の札幌を舞台にした小説で当時の事が懐かしく思い出される。将棋が好きになる小説も一冊紹介しておきたい「サラの柔らかな香車」橋本長道著。勝負の世界を生きる三人の少女をめぐり「才能とは何か」を問う