ちょっといい話 その1

店の近くに昔ながらの八百屋が有る。スーパーもあるのだが野菜はこちらの方が安いのでよく行っている。思わぬ特売品も有ったりする。学生のライブが有ったりすると取りあえずここに行き安い食材を買ったのち打上のメニューを考えている。ただ難点は店が狭いので通路も狭く買った商品を詰め替える場所も狭い。レジはいつも渋滞している。その日は開店11周年の特売日であった。買い物かごを下げたお客は道路にも溢れていた。どうしてもそこで買わなければならないものが有ったので腹を括って並んでいた。二、三人前に車椅子のお客さんがいた。歩道から店内に入るのに段差が有る。当たり前だ。ウエイン・ショーターはそこで躓き「ネイティブ・ダンサー」のヒントを得た。店内に入るのに苦労している。ちょうど通りかかった店長が車椅子を押し上げて店内に入れてくれた。だが店内は混雑していて車椅子で買い物ができる状況にはない。店長は希望の品をお客さんから聞き集めてきてお客さんに手渡した。レジまで到達するのに20分くらいかかったのではないか。普段は2台のレジだがその日は臨時のレジも出動して3台体制であった。だが精算中で人がいると車椅子でレジの後ろは通れない。店長は一番遠くの臨時レジの従業員に商品の価格を読み上げ精算を終え車椅子の後部についているバックに収納してあげた。そしてもう2台のレジのお客さんが精算を終えて商品を詰め替え店を出るまで辛抱強く待った。その時間1,2分だったかもしれない。レジに到達するまで何10分も待っている身にとっては相対的に長く感じたに違いない。だが文句は出なかった。店長は車椅子を押して店外に誘導した