珍客列伝 その1

ここ2カ月の間に珍しいお客さんが顔を出してくれた。1人目は高校時代のバンド仲間で多分30年ぶりの再会になる。CSN&Yのコピーバンドをやっていたが僕とYは段々ジャズに傾倒し大学に入ったら一緒にジャズをやろうなどと語り合っていたがちりじりになり夢は叶わなかった。音楽だけではなくアウトドアースポーツもできる環境で老後を過ごしたいということで室蘭から帯広の方に転居するらしい。その日は当時の音楽活動の話で盛り上がったが改めてお礼を言いに来たという。僕があげた本を読んで考え方が変ったというのである。市井の言語学者三浦つとむの著書でタイトルはうろ覚えであるが「弁証法とはなにか」みたいなものであった。帰りしな生きているうちにバンドメンバー全員で会いたいな・・とがっちり握手をしたが二人ともそういうことにはならないことを知っている。
二人目は高校の同級生である。年に一二度僕が干からびていないかどうか見に来てくれる。僕の年になると体に一ヶ所や二か所悪いところがある。それをうっかりKに話してしまった。日本を代表する母親みたいな存在である。病院に行ったか・・食事はこれが良いとか・・生きていた時の母親よりうるさい。思わず最近改善されてきたと嘘をつく。とは言えありがたい存在ではある。
三人目はgroovy時代からの常連でコロナ禍が終わってから二度目である。その日もよく来ていた相方と4時から飲んでいたということで来た時には完璧に出来上がっていたが根性で寄ってくれた。酔うと昔から僕の事を「兄貴」と呼ぶ。昔よく来ていた実の兄貴の事に話しを振ると「亡くなった」という。ちょっと涙ぐんでいるように見えた。
「一杯奢るよ。兄貴」
「いただくよ」かけていたZECKのCDに負けない音量でグラスを合わせた。