詩人の死

谷川俊太郎が亡くなった。
山あり空アリ大地あり。無限の問いに応えつつ。・・・・
この一節から始まる詩を口ずさめる人間は多い。高校の校歌だからだ。だが谷川俊太郎作詞であることを知っている人間は少ない。僕も卒業してから知った。
谷川の詩は平易な言葉で紡がれている。西脇順三郎や吉増剛造の詩のように荒れ狂う言葉の海に放り出され溺死することなない。子供でも分かるように訳された世界人権宣言が有る。平易な言葉でも大切なことが表現できると知ることになる。
「二十億年の孤独」という詩集に「生長」という一篇がある。
三才
私には過去がなかった
五才
私の過去は昨日まで
七才
私の過去はちょんまげまで
十一才
私の過去は恐竜まで
十四才
私の過去は教科書通り
十六才
私は過去の無限をこわごわみつめ
十八才
私は時の何かを知らない
谷川の詩は18才で終わっている。詩的な意味に於いては人生は18で終わっている。
僕は70才。一編の詩を書けと言われたら書けるかもしれない。だが詩人にはなれない。
詩人の死