日本映画探訪記その9 独立愚連隊

岡本喜八監督の戦争映画である。8月は戦争を考え直す強化月間と定め戦争映画を20本ほど見た。この映画はそのどれとも違っていた。フランク大雑把に言えば戦争エンターテイメントになっているのである。撮影されたのは1959年。札幌の中心街にはまだ傷痍軍人が募金を募っていた時期である。戦争に「笑い」を持ち込むことはかなり勇気が要る行為だったはずである。映画の冒頭主役の佐藤充が馬にまたがり原野を走り抜けるシーンはジョン・フォード監督の西部劇そのものである。ジョン・ウエインに挿げ替えてもおかしくない。この西部劇タッチは最後まで貫かれる。話は中国戦線の話である。八路軍と戦うのち二丁拳銃で立ち向かったり、戦争なのに「弾を込めるまでまってやる」など決闘シーンもある。大物俳優が二人出演している。三船敏郎と鶴田浩二である。この二人が戦争映画に出るときは南雲中将であったり山本五十六連合艦隊司令長官であったり阿南陸軍大臣であったり高級将校であるのが普通だ。ところがここでの鶴田浩二は変な日本語をしゃべる中国人馬賊の統領なのである。「変な配役あるよ。私理解できないあるよ・・・」三船敏郎は一応大隊長であるが崖から落ちたか何かで頭を打ち心身症を抱えていて敵が攻めても来ないのに一人軍刀を抜き「第二小隊左翼の配置に着け」などと一人怒鳴っているのである。それを聞きながら従軍慰安婦が川で下着を洗っている。「あら・・隊長さんまた始まったわ」
この二人をおちょくることによって戦争そのものをおちょくっているのである。
ここで気が付いたことが有る。アメリカ映画では戦争映画も娯楽映画として成り立つのである。「史上最大の作戦」「プライベート・ライアン」でも自分たちは正義であると言う論理を持ち続けていれば戦争映画も娯楽として成り立つと言う事である。
岡本喜八監督は戦中派である。「戦争も勝っているときは楽しい」という話を聞いた時にショックを受けたとインタビューで言っている。
映画とは関係ないが「愚連隊」で思い出したことが有る。五木寛之の小説で「さらばモスクワ愚連隊」と言うのがある。この小説の話をしていたらおばちゃんが刺さり込んできた。「うちの息子もチンピラと付き合っているから勘当してやったよ」
「さらば、息子は愚連隊」と言う事らしい。知らんけど・・・・