記憶の捏造

小山彰太5daysの初日。出し物は田中朋子trio。お客さんもなかなかの盛況で演奏も楽しく、なによりjazz幼稚園東京支部長のS名が帰札すると言う事でミニ同窓会の様相も呈していた。当然酒もすすむ。営業中にちょっとした買い物にコンビニに行った。おりしも小雨が降りだし行灯の隣に停めてある自転車のサドルが濡れていた。「しまった、自転車なんか乗ってくるんじゃなかった」とその時思った。とにかくそう思ってしまった。ああ今日は楽しかった。そろそろ帰ろうと思い鍵を探したが自転車の鍵が見当たらない。ようし、落ち着け。少しは酔っているが考えてみよう。いつも入れる鍵箱をもう一度確かめてみよう。ない。次はポケットだ。パンツだけでなくパーカーのポケットも探せ。ない。どこかに落ちていないかよく探せ。ない。お前は酔ってなんかいない。はじめから考えよう!そうだ、鍵のかけ忘れだ。今までも何回かあった。そうに違いない。ドアを開けて行灯の横を見ると自転車がなくなっている。やられた。鍵をつけたままなのでどこかの酔っ払いが乗っていってしまったのだ。
もう二回もやられている。楽しかった一日が台無しワシントンになってしまった。僕はPKを外したストライカーのようにとぼとぼ家に帰った。雨がひときわ冷たく感じた。
翌朝、目覚めが二日酔いをつれて訪れた。しょうがない。自転車を買いにいかなくては。近くの中古屋でお手ごろなやつを買った。それを自宅の自転車置き場にもっていくと見慣れた自転車があった。?マークが毛根の数だけ頭に浮かんだ.何で盗まれた自転車がここにあるんだ?????????????。
激しい二日酔いの余震が訪れた。
犯人は身近にいる。推理小説の鉄則だ。
そして記憶は常に作り変えられる