「転換期を生きる君たちへ」(中高生に伝えておきたい大切な事)という書籍がある。日本の識者11人が執筆していて最近出版された。だから転換期とは今のことになる。著者が今の中高生をどのレベルと考えているかにも温度差が有って面白かった。流石にこれはわからないだろうという内容のものもあったが、編者の考えで注文を付けなかったらしい。一番難しいかったタイトルは「戦後入門」加藤典洋著。僕はこの人の「敗戦後論」他数冊読んでいるのでここに書かれていることは理解できたが、それは僕が大人だからではない。そのことに関して考えたことがあるからだ。若い時に考える習慣をつけておかないと汚水が駄々漏れなのに完全にコントロールされているとか、、戦闘行為を銃撃戦と言い換える嘘を許してしまうことになる。小田嶋隆が書いている「13歳のハードワーク」の中に(職業あるいは夢についてあれこれ)という項目がある。「夢を持ちなさい」とか「自分の夢に向かって突き進みなさい」とか言われた経験があるだろうと思う。僕は中学生までは親戚のおばさんに「直ちゃん何になりたいの」と聞かれるときは「まだわからないです」と答えていた。ところが学校の作文となるとそうはいかない。「夢」を書かないといけない。
10年前父親が亡くなって母親が身の回りのものを整理していたら「こんなものが出てきたよ」と言って見せてくれた。「僕の夢」という中学一年の時の作文だった。僕はその時、読まなくとも内容は覚えていた。嘘を書いたのを知っているからだ。船員かサーカスの団員になって世界中を回りたいと書いたはずだ。後半の方はまんざら嘘ではない.『兼高かおる世界の旅」というテレビ番組があって毎週JALの飛行機、(JALですよ、バニラなんかではなくて)で世界中を旅している。その紀行番組の影響で取り敢えず世界中回れそうな職業という事で船員かサーカス団員と書いたのだ。大体「自分の夢」を書けと言っても夢と職業がリンクしていない。それに周りには会社員と大工とか左官屋の職人、あとは商売を営んでいる人と一人のヤクザしかいない。海外特派員とかjazz barのオーナーという発想は全くない。
でも先生の立場としては夢をもっと社会に貢献させるようなものに繋げてほしくて出題したのに多少難ありという事で親の元に送られたのであろう。
その頃は夢などなくても楽しかったので将来のことなど考えもしなかった。早く夢を持つという事は自分に負荷をかける事でもあるのではっきりするまで待った方がいいと小田嶋隆も書いていた。
では、「今の夢は」と聞かれるとする、もう後戻りはできないので今の生活のクオリティがもうちょっと上がればいいと答えるぐらいしかおみ浮かばない。
質の高い演奏の回数が増え、それを共に語れるお客さんが増え、愛人と会える回数が増え、もう駄目だと分かったら消えるように亡くなりたい。