「嘘みたいな」本当に起こった話を高橋源一郎と内田樹が選者となって応募総数1500通の中から選りすぐった話をまとめた本がある。これはポール・オースターのnational story projectの日本版の企画だ。ポール・オースターの方にも面白い話は載っているが長い話が多いので「嘘みたいな本当の話」ほうから何話か紹介したい。
出戻りベッド
自分の知り合いは、彼女と別れる時にベッドを彼女にあげたそうです。それから一年後新しい彼女できて、その新しい彼女の部屋に行ったら、前の彼女にあげたはずのベッドがあった。「どうしたの、このベッド」ときいたら、「寿退社した先輩にもらった」。
当人は「彼女は変わったが、ベッドだけは変わらなかった・・・・・」と言っていました
解説
これが本当の回転ベッド
モガといわれた女
近所においしい洋食屋ができたと言い出したので「店の名は」と聞くと「オペン」と答えた。場所が近くなので言ってみると店の名は全く違っていた。ばあさんは「open]の札を店の看板だと思っていた。
解説
groovy時代「グルーピー」様という領収書がたくさんあった。
男は辛抱、女は美貌
二十年ほど前に銭湯にいたばあさんは客の刺青者が短い小指で鼻をほじっているとすっぽりこゆびが入って見えるからか「汚いね!そんな奥まで小指突っ込むんじゃないよ」と叱り刺青者が仲間の分まで買ってやろうと「コーヒー牛乳これだけちょうだい」と言って片手(パー)を出したら、コーヒー牛乳4本とヤクルト1本出しました。
解説
似たジャンルで思い出した話がある。
僕が大学生のときだ。夏休みの時、銭函の北晴合板という工場で深夜のバイトをしたことがある。大型の乾燥機のベルトに木を乗せていく単純作業だ。だが注意を怠るとローラーに手をはさまれる危険もある仕事だ。
主任と呼ばれる人がいた。作業の注意点など説明してくれた。最後に「学生さん注意しないとこうなるよ」と言って左手を見せてくれた。小指と薬指の半分が無かった。
僕がびびったの見て笑いながら「冗談だよ。俺はこうなってから、ここにお世話になっている」
その主任とは休憩時間に時々話をするようになった。
「学生さん、すすきので揉め事に巻き込まれたら『北海の龍』という名を出してみな」と言われた。
幸いその名を出すことも無くここまでやってこれた。
暗証番号
友人が銀行の窓口業務をしていた頃の話。
ある老人がキャシュカードを作りにやってきた。書類をおおかた書いて最後に暗証番号を書く段になって老人は尋ねた。
「これは暗号のようなものですか」
友人は一寸違和感を覚えたが答えた
「ええ、お客様だけがわかる暗号のようなものです。この四つの枠内に書いてください」
老人はしばらく考えた末に言った。
「生まれた年でもよろしいですか」
「ええ、結構です」
枠内に力強く「イノシシ」と書かれていた
暗証番号は訂正が聞かないのではじめからもう一度書き直しになった。
これも最近僕が経験したことなのだが、深夜西28丁目まで行く用事があって北大通りで流しのタクシーを拾った。
帰り二時間ほどしてからまた流しのタクシーを捕まえた。
「北24条でいいですか」と聞かれた。先ほどの運転手さんだった。
僕はこの経験はもう一度だけある。
中学生のとき夜中に高熱を出して18丁目にある救急病院にタクシーで行ったことがある。母親が捕まえてきたタクシーだ。点滴などの処置をしてもらって少しだけ楽になった。帰りも勿論タクシーだ。たまたま手を上げたタクシーは同じ運転手さんだった。この話を母親にしたら50年前のことなのに覚えていた。まだ呆けていないので安心した。