2024.10.23 「かおりな」へのECM


按田佳央理(fl) 斎藤里菜(b)
 このDUOを何度か聴いているが、もっと知れ渡ってよいと思うので勝手ながら宣伝係の任を負うこととした。演奏の中にクラッシックの曲が幾つか盛り込まれているので、「クラッシックはどうもね」と訝る向きもあるだろうが、予断を持つ必要は全くない。クラシックをどうリフォームするかに注目するだけでよいと割り切っている。さて、斎藤のここ数年の傑出した活動は周知のことだが、ジャズ一本鎗のファンに按田は余り馴染みがないかも知れないので、僅かな回数ではあるが、ライブを通じた按田の印象を添えることにする。あらかじめ断わっておくが、彼女がその道でコンクール受賞歴が多数あることに惑わされることなく率直に語り始めようと思う。まずは鍛え抜かれた音色が出色であることは掛け替えのないことであり、最初に強調しておきたい。次に演奏全般の印象として、どうやら彼女は無理矢理ジャズに同化しようとはせず、クラシカルな素養をそのままジャズに対峙させようとしていることが窺われ、その受けに回らぬ積極性が通例のジャズDUOとは一線を画す局面を生み出していると感ずる。またジャズ側の曲においては、サックスのようなリード楽器とは異なる管の世界が存分に描かれ、こちらの興味を大いに引き出してくれているといってよい。斎藤の大きなノリに按田が自在に応じていく様子はコードレス編成に求められる強い緊張感に結びつき、終始そこが聴きどころの核を成していて、何ともカムフォータブルなのである。悪銭は身に付かないが、良演は身に沁みる。演奏曲を思い出す限り列記しておく。「マイ・リトル・スウェード・シューズ」、「ブルース・エット」、「ジプシー・ウイズアウト・ア・ソング」、「春の海」、「仮面舞踏会(ハチャトリアン)」のほかC・ヘイデン、BACHの楽曲など多種多用。なお、クラッシク曲はどっかで聴いたことあるよな、といった具合なので無駄な抵抗は不要だ。
 冒頭に述べた宣伝強化に応えられたか一抹の不安は残るが、本文がいいコマーシャル(ECM)になったと思って頂けたら幸いである。標題の「かおりな」とは勿論二人の”乙女のいいノリ”に導かれて安直に名前を合体させたものだ。何れこのDUOの再演が計画されるだろうから、ホームページの見落としがないよう要チェックの喚起をお願いしておきたい。
(M・Flanagan)