2024.3.14 田中朋子Original Night

田中朋子(key)奥野義義(as、bs、fl)岡本広(g)斎藤里菜(b)竹村一哲(ds)
この夜は標題のとおり、田中朋子さんの作品集である。オリジナル作品のみの演奏と告げられて、我が意を得たりと思わせることは、そうそう多くはない。私たちはオリジナル作品について、熟す前の果物が出荷されているような印象を持つことがあることに薄々気づいているからだ。朋子さんの曲はその難を逃れていると常々感じており、筆者のみならずここに異論をはさむ余地はないと察する。ここ数年前から朋子さんは鍵盤ハーモニカを常備していて、アコースティックとは異なる味わいを付加している。曲にもよるが、フェリーニがいたら「私の映画に使わせて貰えないか」と申し入れがありそうな情緒豊かな音色が気を引く。毎度のことだが、朋子さんの演奏を聴いていると頭の中に過去の映像が映し出されてくる。ご本人の語りにもあったが、いくつかの曲において彼女がここレイジーで共演した今は亡き臼庭、津村、セシルの想い出深い演奏光景が滲み出てくる。その光景はかつては重々しいものであったが、今はスローに宙を横切るという風になっている。こういう思いの去来を通じて、田中朋子さんのプレイにはその演奏容量を超えた記憶が収められていると感じてしまう。喝采を送りつつ、柄にもなく感傷を隠すのに一苦労してしまった。この日はSextetというLB標準からするとやや大き目の編成で、時に華々しく賑わい、時に深いところに向かって偲び行く。何れも重厚な仕上がりと言えるものだ。この日は奥野の本邦LIVE初公開となった貴重なバリトン、時々アナーキーな岡本さんの歌いっぷり、菅原の抜いたフィーリング、一部高齢者の基礎票を着実に固めている里菜夫々の巧みさと調和がここにはあった。一人抜けている。「一哲、いい仕事してるよな」と掛けた帰り際の一声を以てレポートを納めよう。Original Nightの演奏曲は「Blues For Lazy Bird」、「Alkaid」、「Day Dream」、「母の絵」、「Hope」、「道くさ」、「Requiem」、「Life Long Friends」、「Vega」。
 終わりに朋子さん今後についてお知らせしておきたい。今年はレコーディングを構想しているらしい。その頼もしき意欲には敬服する。なお、5月にはまたこの編成でLIVEが計画されているので、是非お運びのほどを。
(M・Flanagan)