5Gの時代になんとも昭和の裏街道を思わせるタイトルの映画である。梶芽衣子が匕首一振りで女ゴルゴ13を演じている。藤純子が演じる任侠物とも違う。原作はアニメで小池一夫が作者である。時代設定は明治時代である。時代変革を願う若者と女殺し屋が官憲に歯向かう同じ勢力として描かれている。この構図は60,70年代、学生運動が華やかし頃、高倉健主演の任侠映画をヘルメット片手に見に行く運動家たちのスタンスと同じである。鞘を捨て相手方の組に乗り込む健さんとゲバ棒抱えて機動隊に対峙する自分を同一視していた。そこに思想的な右も左もない。主演の梶芽衣子は殆ど喋らない。ポール・ブレイのソロアルバム「open to love」の音数よりも少ない。女囚サソリもののデビュー以来口数の少ない堪える女で人気を獲得してきた。口数の少ない女の良いところはミステリアスに見えることと下手な演技がバレにくい所にある。梶芽衣子が修羅場に赴くロングショットがある。縦じまの和服の裾が風でちょっと乱れる。肌の白さにドキッとするのである。監督は藤田敏八である。秋吉敏子を起用して「妹」などの昭和を代表する青春映画を撮った監督である。あれ・・変換ミスである。秋吉久美子の間違いである。秋吉敏子が妹だったらホラー映画になってしまう。
いたるところに黒澤明への敬愛の念がにじみ出ている。血が壊れた消火栓のように吹きだしてくる場面、手が藁人形の試し切りのようにスパッと切り落とされる場面は「用心棒」そのままである。タランティーノ監督がこの映画が好きだと聞いた。正直どこにインスパイアされたのかは僕のレベルでは分からない。マイルスがアーマッド・ジャマルにインスパイァされることもあるのだから、世の中分からない。
ぼくも007に刺激を受けている「いいスパイや」