2015.9.18-19 Cool-me or heat-me
くるみさんは、多様な音楽経歴の持ち主だが、札幌おいてその名はZEKのピアニストというに尽きる。ZEKはツェッペリンの曲のみ演奏するバンドだが、ロック・スピリトをジャズ変換させる猛烈なエネルギーによって、特異な魅力を獲得していることはご存知のとおりだ。今回は“珠抜き”につき、ZEKにはないsomething elseを期待している。そこで気になるドラマーだが、ドラムがなければ絶滅危惧種と言われている伊藤が起用されたことは興味深い。また、あらかじめ情報としては、スタンダード及びその周辺曲が採り上げられるとのことだった。オープニングは「ハンプス・ブルース」、これは“Hampton Hews trio”に収録されている曲で、私事で恐縮だがジャケット写真を待ち受け画面に拝借しているので意外なところで納得。「プレリュード・トゥ・ア・キス」のあと、くるみさんが、決意表明のように予定していなかった「サーチ・フォー・ピース」(リアル・マッコイ)を演奏すると宣言。我が国がルール放棄したこの日に対する1個人としての抗議が込められていた。ファラオ・サンダースの「プリンス・オブ・ピース」も同じ思いが意識化されていたのだろう。それにしてもピアノが飛び切り鳴っている。「タンジ゙ェリン」、「ア・フラワー・イズ・ア・ラブサム・シング」、「ノーバディー・ノウズ・ザ・トラブル・アイブ・シーン」、「酒とバラの日々」、「ラッシュ・ライフ」。旋律をたじろがせるかのように鳴り響いている。どういう訳か最後の方で“月”に因んだ曲を演奏すると前置きがあり、「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」、この曲は軽妙で洒落た演奏しか聴いたことがなかったが、くるみさんのは天体的衝突のようなハード・ジャズだった。続いて、菜のは~なばたけぇに、曲名「おぼろ月夜」を思い出すのに苦労した。そしてR・カークの「レイディーズ・ブルース」を以て二日間に幕。
やたらに鳴るくるみさんの音が気になっていたので、感覚解説の達人米木さんにZEKの時とは違った力強さを感ずる旨を伝えたところ、“くるみさん気持ち良くやってるね”、巨匠らしいまとめだ。ある時は大人心に冷静さを授け、またある時は熱くダイナミックな演奏が提供された。Cool-me or heat-me。快心の演奏に触れた清々しさ、清水くるみさんを改めて認識するのにZEKKOUのライブだった。一つ加える。入魂の演奏をした伊藤に心から拍手を贈りたい。
(M・Flanagan)