今回の筆者を紹介する。日本を代表するドラマー本田珠也である。どのアルバムも今の珠也の音楽を作るうえで重要なものになっているのがわかる。1回で載せるのはもったいないと考え2回に分けることとした。
1) Takehiro Honda / It’ Great Outside
自分にとって一番身近で影響受けたのは、本田竹広の音楽であり紛れもなくそのメロディの中にある世界観である。ジャズはもちろんソウルや
ファンクを通して分かりやすいメロディを単純明快に、ゴツゴツとした魂を一緒に乗せて気持ちよくグルーヴする。ここで聴かれるスティーブ
ジョーダンとアンソニージャクソンのリズムには深い深い尊敬の念があり即興的に音楽を構築していく楽しさが溢れている。そして何より全員
明るく伸び伸びとした演奏はとてもリラックスして自然と体が躍りだす多幸感。いつ聴いてもイイ。次に発表するNaitive Sonの礎となった記
念的な作品。タイトルはスタジオに缶詰だったミュージシャンが久しぶりに外の空気を吸った時に発した言葉だそうです。
2) Yellow Magic Orchestra / Solid State Survivor
Y.M.O.は僕の血となって肉となっている一つの重要な細胞のような音楽。これだけ同じものを何回も何回も聴いた音楽は我が人生において
Y.M.O.が一番多いと思う。なので言わばもう体の一部のような存在である。ここではこのアルバムを挙げたが、細野晴臣名義の1枚目からBGM
までのY.M.O.は特によく聴いていましたが、同時に当時はエアーチェック(ラジオ)でのY.M.O.のライブをカセットで録音し、何処へ行くにも聴
いていた。思い出すのは東京から親父の故郷である岩手県の宮古まで当時は在来線でしたが1982年に東北新幹線が開業し、それまで8時間く
らい掛かった乗車時間が6時間に短縮になりました。その乗車中ずっとY.M.O.を聴いていた。当然、幸宏さんの音楽殺人を上げるべきかと思い
ましたが、音楽の多様性を考えたらやはりこのアルバムにしまました。もちろんライディーンは外せないけど、幸宏さんが言っていた「かまや
つひろしさんのアレンジ」によるトリッキーにカバーしたビートルズのDAY TRIPPERはお気に入りです。
3) Tony Williams / Joy of Flying
自分が15才でプロになる頃に親父から聴かせてもらったアルバム。トニーが所謂フュージョンアルバムを制作した最後のアルバム。ゲストが豪
華でハービーハンコックはもちろん、ジョージベンソンやトニースコットなどの有名どころから、ロック畑のロニーモントローズとのライブセ
ッションも収録されているが、一番の聴きどころはフリージャズの異端児セシルテイラーとデュオを演じている。この稀有な演奏を聴くだけで
も価値があるが、アンサンブル重視の中で、時折出るトニーの力技のフィルインが気持ちいい。トニーを最初に聴いたのはライフタイムのTurn
it Overだったのだけど、激しく難解で拍子が撮れなかったという事もあり、こちらの方が子供ながらにメロディもリズムも分かりやすかった
のであげました。
4) Elvin Jones Trio / Puttin’ it Together
15才からプロになり、ネイティブサンで5年叩いてから自分が20になっていよいよジャズの世界に足を踏み入れた時に一番聴いたアルバムで、
当時はポリリズムなんて言葉を知らなかったけど、このエルビンの四肢バラバラの動きを習得したいが為に重箱の隅を突くように聴きまくっ
た。元々は親父から「ジャズやるならこれを」と渡されたLPの一枚だったのだが、その他に渡されたジョンコルトレーンの海賊盤やマッコイタ
イナーのリアルマッコイには特別な思いがある。それからは自分からエルビンを聴くようになりウェインショーターのブルーノート盤も聴き漁
った。でも多分エルビンの作品の中で墓場まで持っていきたいのはDear, John Cかな(笑) 。1992年ごろ臼庭潤とサックストリオをやって
いてこの中のRezaとかGingerbread Boyとかよく演奏しました。
5) Led Zeppelin / Physical Graffiti
少し前後するが、ジャズを始める数年前に初めてLed Zeppelinに衝撃を受けひょんな事から近所のレコード屋の店長さんとLed Zeppelinの
コピーバンド(The Nobsという名前)をやるようになった。1992年ぐらいまで参加していたのでジャズやりながらもLed Zeppelinのコピバン
やってた。やはり自分にとってエルビンとジョンボーナム存在は不可欠。後にジョンボーナムがジャズ好きでマックスローチやアルフォンス
ムゾーンが好きだと知り、とても親近感を覚えた。だから現在活動しているZEK3の演奏方法は、とても必然的で自然の成り行きでやってい
る。ジョンボーナムの事を語り出したら止まらないので、これぐらいに収めておきます。
master’s comment notice
30年ほど前のことになる。珠也に札幌の中古レコード屋全部連れて行ってほしいと言われ一日中レコード屋巡りをしたことがある。その時竹広さんの「this is honda」が売られていた。正価1500円のものが5000円の値がついていた。珠也が「なんでこんなに高いんだ」と聞いた。店主はこのレコードは絶対に再発されないからだと答えた。珠也が「俺息子なんだけど」というと500円引いてくれた