コンプレックス文化論 武田砂鉄著

今日買ってきた本なので読み切ったわけではない。前書きを読んで目次を眺めていた。コンプレックからどのような文化が生まれてきたかを考察した本である。章別に色々なコンプレックスが列挙されている。天然パーマ、下戸、一重、親が金持ち、遅刻、背が低い、ハゲ等々。遅刻の章をぱらぱらめくってみた。ひよっとしたら日本jazz界の大御所Oさんの事が考察されているかと思ったが名前はなかった。この章は後でゆっくり読むとする。やはり気になるのはハゲの章である。僕はハゲに関しては新主流派jazzに関してくらいうるさい。僕の頭髪事情に関して説明しておく。20代の時から若白髪でアンドレ・プレビンのピアノくらい白かった。ぺいぺいの会社員だった頃上司と銀行周りをしていた時の事だ。融資課長が僕に向かって預貸の話をするのである。「あの、課長はこちらです」と言った時の融資課長の驚きの顔を今でも覚えている。会社の戻ってから上司に「お前髪染めてこい」と言われた。白髪は禿げないという言い伝えがある。ガセネタである。30代の半ばで円朝の怪談噺の様にバサバサ抜ける時期があった。いちおう会社員なので今の様にバリカンで五分刈にするわけにもいかず中途半端な髪型にしている時期があった。それでもハゲに悩んだことは全くない。僕みたい感覚を持っているのを「ポジティブハゲ」という事をこの本を読んで知った。こういう事を研究している人がいるのだ。「禿を生きる 外見の男らしさの社会学」須長史生著の中で「ポジティブハゲ」の問題点を3点指摘している。一点だけ紹介しておく。禿げた男性に特定のイメージが付着した男性像(明るい、精神的に強い、外見を気にしない)を要請しているとある。自分の事を言われていると思った。このような「ポジティブハゲ」によって救われるのはごく僅かであり有害ですらある。ええ・・・と思ったが思い当たる節がある。自分はある分野は気を使って話すがある分野は雑になる。相手の立場で考えることの大事さを思い出した。勉強になる。
禿げはありがたがられる抜け道がある。例えば「デブ」「ブス」と公式の場で発言したとしたら一発レッドカードである。ドリフターズのコントで加藤茶がハゲカツラを被って「あんたも好きね」と言ってもセーフなのである。それは坊さんの世界では毛が生えている人より剃髪している人の方が徳が高い気がするからである。この本でも述べている。瀬戸内寂聴が剃髪してるからこそありがたく話を聞くわけでサザエさんみたいにチリチリパーマだとしたらありがたくないでしょう。そうかもしれないと思う。
気持ち良く禿げているストーンズのキース・リチャーズがミック・ジャガーがナイトに叙勲された時のセリフがいかしている。知りたい方は本を読んでください。
付記
本の紹介と言うよりハゲ談義になったしまった。ついでなのでハゲネタを紹介しておく。今バンクーバーにいるマークが言っていた。カナダは髪の量で散髪代が違うらしい。
「俺ならいくら」
「マスターはほとんどタダだな」
臼庭と例によって駄洒落を言っている時の事だ。ミュージシャンにあだ名をつけていた。小樽の素晴らしいサックスプレーヤーOは時々フルートを吹く。「ハーゲーマン」でどうだというところで話は落ち着いた。回りまわって本人に伝わってしまいむっとしていたという話を聞いた。その時僕は「ポジティブハゲ」と言う用語は知らなかった。