2019.1.25 Maxime Combarieu Japan Tour

マキシム・コンバリュー(p)三嶋大輝(b)伊藤宏樹(ds)
 昨年初登場のマキシムを聴き逃していた。軽めにいうと、洒落たモノが聴けるかも知れないというぐらいには、興味深く足を運んだ。ルグラン、バルネ・・・あまりフランス・ミュージッシャンを思いつかない。そうこうする内に開演だ。今回は、最初に聴き終えた時の印象から言ってしまおう。マキシムは、ピアノの打楽器的な要素を極力抑えた演奏家だと思った。フランス語による柔らかな朗読を音に変換しているような感覚に捕らわれたと云えば、少し近いかもしれない。筆者は、かつてイギリスのトラッド音楽をよく聴いていた。高揚も哀愁もこの人達にしか表現できないに違いないと思っていたが、そのことを想い出した。マキシムも他のあちこちで耳にしているジャズとは異質である。重要なのは、ここにフランス人としての彼の個性が表出していることだけは、正当に評価されるべきであるということだ。そろそろ選曲を紹介する。H・シルバの「ストローリン」、オリジナル2曲「4PM」、「サニー・デイ」、マイルス「ソーラー」、オリジナル「セーヌ川ブルース」、エバンス「ナーディス」、T・ハレル「セイル・アウェイ」、映画シンデレラから「ア・ドリーム・イズ・ア・ウイシュ・ユア・ハート・メイクス」、「(無題)」、アイルランドの街への思いを綴った「キルケニー」そして「酒とバラの日々」で終えた。熱く汗臭いバップを好む信者がどう思うかは預り知らぬが、生でヨーロッパ的感受性に触れることができたことは大変貴重なことだったように思う。サイド・メンについて一言。気合の男である伊藤の中に暴れるに暴れられない抑制能力が備わっていることを初めて知ることができたのは収穫。三島は例によって「この男有望につき」の会心の演奏を披露し、LBでのランキングをまた上げたのではないか。
 ところで、フランスでは商店での接客や窓口業務の態度が宜しくないと聞く。それは、彼らがサービスとは奴隷が主に仕える時のものだという認識に由来しているかららしい。観察していると、どうやらマキシムはモノ腰の柔らかな人物であることが見てとれた。帰りがけ“We Japanese know yellow-jacket people attack Presidennt マクロン”と言ってみた。彼は、はにかみ笑いを浮かべた。たった10秒の国際交流。“風のささやき”を鼻歌まじりに家に向かった。
(M・Flanagan)