2019.5.24 古舘賢治sings 昭和歌謡

古舘賢治(g.vo)板橋夏美(tb)
 このDUOは時折ライブで歌謡曲を挿入して来たらしいが、当夜は、昭和歌謡のみに撤するとのことであった。「昭和」は、先ごろ二つ前の元号になってしまったが、ある年齢層の人たちにとって、それは今より不便な黄金期といえるものだ。筆者にとってその時期は1960年代のような気がする。あらかじめ何人かの歌手を思い浮かべていたが、結果的に的中率は非常に悪かった。それはそれでよいではないか。昭和歌謡と言いながら、最初は「ミスター・ロンリー」が選ばれた。この曲はご存知のとおり“ジェット・ストリーム”のテーマ曲である。古舘は間奏で城達也のあのナレーションを再現して見せた。彼はやるべくしてやった立派な確信犯である。いよいよ本題に突入するが、昭和63年間初期の頃の藤山一郎「酒は涙か溜息か」と李香蘭「蘇州夜曲」で口火を切った。これらの曲は勿論リアル・タイムで聴いてはいないが、その後の“ナツメロ”歌謡番組で耳にしていたものだ。後者の方は時折ジャズ演奏でも聴かれる。少し驚かされたのが、鳥羽一郎の演歌ド真ん中「兄弟船」だ。この曲には“型は古いがシケには強い”という漁師のリアリティーを込めた一節があるのだが、古舘流にかかると富裕層が所有する冷暖房、テーブル・ソファー、洋酒完備のクルージング船の雰囲気だ。その洋酒に手を出したわけではないが、聴くにつれ酔いが回って結構いい気分になってしまった。他の曲名は余りよく思い出せないが、近藤真彦「ギンギラギンにさりげなく」のほか「影を慕いて」ディック・ミネ、坂本九、サザン・オールスターズの曲だったと思う。このライブは長い昭和の代表的な曲をLCCでひとっ飛びさせてくれた。予想した江利チエミ、西田佐知子、伊藤ゆかり、ザ・ピーナッツ。ハズれはしたが、満天の星をいただく歌謡の海に浸り、刹那の上機嫌を味わうことができた。
 夜間飛行のお供をいたしましたパイロットは古舘健治、チーフ・キャビン・アテンダントは板橋夏美でした。 
(M・Flanagan)