半導体1本足打法

最近我が道新に半導体会社ラピダス関連の記事が頻繁に取り上げられることが多い。北海道にとっては何か明るい話題の様に取り上げられている。千歳近郊にIT企業が集結し”北海道バレー”が形成される様な機運も高まっている。北大はじめ道内高専に半導体関係人材育成の講座が開設されたり定員が増員されたりしている。先日は東北大と北大がIT関連の連携協定を結んだ。学長が札幌南校の同窓で旧知の仲と言う事が円滑に事が運んだ原因でもある。会社が設立されただけで半導体戦争に勝ったかの様で何か胡散臭いのである。この事業経産省主導で始まり5兆円規模の一大プロジェクトである。だが経済界の反応は盛り上がらない。出資社にはトヨタ、デンソー等も名を連ねているが出資額は73億。ご近所付き合いの香典程度である。これでは盛り上がらないと言う事で経産省が700億出資し工場設立の為追加で2600億追加出資を決めた。この行け行けドンドンの体質は高速増殖炉もんじゅと同質である。莫大に金をつぎ込み蛍の尻ほどの明るさも提供できなかった。失敗しても誰も責任を撮らない体質による。20年前日本の半導体産業は世界一であり世界シェアの50%を誇っていた。その夢をもう一度と言う事であるが現在の順位は10周遅れの最下位位グループなのである。トップは韓国、台湾、アメリカでさえ遅れを取っている。世界の標準は現在3nano。ラピダスは2027年を目途に2nmの半導体の販売を目指している。この単位小さすぎて良く分からない。10億分の1メートルと言う事であるがこう言われても余計分からない。素麺よりはかなり細い。この微細な半導体を作る製造機器は今の日本にはない。当時はニコンなどが技術を持っていたが10周遅れになってその分野から撤退してしまい現在オランダのASMLの寡占状態である。そしてこの機械、ショパンのピアノ曲の様に繊細で綿密なメンテナンスが必要で台湾にはその技術者が4500人も常駐しているという。それだけの人材を集めることができるのかという問題もある。西村経産大臣がインドに応援を依頼したと言う事であるがIT部門でも専門分野が違う。ショパンコンクールで優勝してもjazzが弾けるわけではない。ラピダスはIBMから技術援助を受ける。IBMは2nmの半導体製造に成功しているが自社では製品化していない。アメリカ政府も資金援助をしていない。実験室レベルで成功するのと製品化するのでは月とスッポンポンの差がある。1細胞を作るのと一人の人間を再生させる違いくらいある。IBMは日本に高額な特許料を払わせてれば対価は得ていると考えている。万が一製品化できたとしたらそれはそれでビジネスパートナーとして恩恵に預かる。それでなければアメリカが手を拱いているはずがない。半導体には微細化した設計回路図が必要である。それは一本一本の木を植えて街路樹を育ててそれを東京の都市設計にまで広げることに例えられる。この作業を担う会社も世界レベルで寡占状態でありアップルなどのIT企業がラピダスの為に半導体の設計図を発注するとは考えられていない。ビジネス界の常識らしい。千歳にはラピダスに納品しようとする企業は多く進出しているがラピダスの商品を使おうという企業はよっても来ないと言う事実がある。困ったことにこの事業成功の可否は9回裏までならないと分からない。それまでは大阪万博の様に威勢の良い掛け声が掛かり続けるはずである。半導体に関してはドドド素人であるが千歳に寂れた工場だけが残っている図が思い浮かぶのである。