百貨店と新幹線

札幌駅前のエスタビルが今年の夏で解体されると新聞の記事にあった。新幹線が延伸するのに合わせて老朽化したビルを立て直す様だ。僕はそのビルのキーテナントである百貨店に勤務していたことが有る。東京本社の経理財務本部で退職したため札幌から撤退する時はテレビで見ていた。知った顔が最後の日閉まるシャッターの前で恭しく頭を下げていたのを覚えている。入社当時新幹線は数年後には延伸するような話であった。ビル自体新幹線が横付けできるような作りになっており売り場も新幹線の乗降客を意識した配置になっていた。だが待てど暮らせど新幹線は来ない。数年後通常の売り場配置に大改装した。噂では自民党の有力者金丸信のおひざ元山梨県の方に新幹線を通すと言う事になったと聞いた。ところが北海道の方も掘削工事の問題でもうないとは思うがオリンピック時期には到底間に合わないほど予定が遅れている。山梨の方もリニアの計画になりどこを掘るかで未だに目途が立っていない。もうあれから45年たっている。どういう根拠で進出したかははっきりしない。大阪のライバル店大丸に出店させないための陣取りとも聞いた。当の大丸は満を持して駅の西側に出店し札幌では一人勝ちになっている。流通環境も激変しそごうは西武とくっつきセブンホールディングの参加に入った。現在は海外の投資会社に売却する計画がとん挫位している。もう当初の会社とは全く違う資本になっている。整形に整形を重ねたマイケル・ジャクソンの様に元の顔が思い出せない。家賃月額3億、400億の長期負債を抱えての船出であった。10年で単年度黒字の予定であったが売り上げは伸びなかった。予算通りの数字が出せない場合はトップの首が飛ぶ。守るため不正経理に手を染めた。銀行を騙し本社を騙し公認会計士を騙す。資金繰りに困ると弱小取引先の支払いを止める。泣きついてくる会社が何社もあった。使ってくださいと言って貯金箱を持ってきた女子職員もいた。バブルの頃は売れるはずはないと用意もしていなかった年数と同金額19xx万の福袋が売れたり3億のシャガールの絵画が普通に売れたりしたこともあった。阪神淡路大震災の時期僕は本社に転勤を命じられた。30店舗あったグループ全体でも経営不振に陥っており負債総額1兆2000億に上っていた。主な仕事は再建計画を作る事と銀行に借金棒引きにしてもらう事である。おまけに札幌の上司と本社の間に挟まれ二重スパイのゾルゲの様な存在でもあった。経理の仕事と言っても色々ある。僕の能力を超えていた。Jazzにも色々あってトミー・フラナガンがジャイアント・ステップ上手く弾けなかったことと似ている。病気にならないうちに後先考えずに退職した。僕の上司にあたる人が亡くなっていることを知ったのは赴任してからであった。