風と共に去りぬ

言わずと知れたビビアン・リーとクラーク・ゲーブルの名作映画である。
Gone with the wind
windowとスペルを間違えると「窓と共に去りぬ」となりタカ&トシが出てきて「台風か!」となる。
だが今回の話はGone with the money。
「金と共に去りぬ」だ。
日産のゴーン会長が逮捕された。発端は役員報酬の虚偽記載による金融商品取引法違反だ。水面下では仏資本の入っているルノーとの資本比率をめぐる日産との暗闘。それを裏で仕切る日本政府の戦いの様相も呈し混迷を深めている。そのことは今後の成り行きを見るとして言いたいことはそのことではない。
傾いた会社を立て直した経営者が当たり前のように巨額の報酬をもらうことが許される社会の仕組みそのものだ。
もしゴーン会長の役員報酬がもっと安ければ営業利益が多くなりそこに課税され、もしかしたら福利厚生関係の財源になるかもしれない。だが企業は税金は払いたがらない。取られるくらいなら仲間で分けようぜという事になる。従業員の給与を上げる会社があるかもしれない。大きな意味での仲間の株主に配当するかもしれない。或いは将来のために取っておこうと内部留保に回すかもしれない。もっと単純に俺たちだけで分けようぜとなるかもしれない。俺たちとは役員のことである。ここまで立て直したのは俺だ。俺が10億貰う。お前たちにもおこぼれをあげる。その俺がゴーン会長である。ここまではすべてどの選択肢を選んでも合法的である。
会社は誰のものかという事である。
企業再建のために乗り込んできた経営者は冷酷なのが普通だ。会社がつぶれてしまえばあなたたちは路頭に迷うのですよ・・・・給料がもらえるだけで幸せと思わなくては・・・・と意識革命と言う名のおまじないをかける。種明かしをすれば同じ給料でもっと働くという事である。末端では合理化と言う錦の御旗の下でコピー枚数を減らしたり電気をこまめに消したり、鉛筆を持てなくなるまで使ったりしたはずである。そしてまた利益が出始まるとそれを指導した人間がごっそり持っていく。会社の浮き沈みと言うのはそういう事だと思っている。
この問題が起きた時、デジャブ現象を感じた。
「あれ、このコード進行聴いたことがある。」と言う感覚に似ている
僕が勤務していた会社の浮き沈みにコード進行が途中まで同じだ。一度倒産しかかった会社にメーンバンクが社長を送り込んでくる。従業員は艱難辛苦に耐え店舗数、売上高だけは業界一位になる。時代はバブルに入り3億のセザンヌの絵画が簡単に売れる時代になっていた。見かけの派手さとは別に従業員の給与はそんなに変わりはない。そうこうしているうちにバブルがはじける。新規投資していた部分の金利に苦しめられることになる。丁度その頃、その会社の経理財務本部に勤務していた。売り上げは1兆あるが負債も1兆2000億ある横綱稀勢の里のような会社であった。
その再建案を指導する木っ端役人のような仕事をしていた。色々な合理化が図られる。各支店もう鼻血も出ないところまで切り詰めている。ある筋から社長の報酬が高すぎるのでは・・・という話になった。見かけ上は日本の経営者の中で特に高いというわけではなかった。
子会社の連結決算書をつくれと言う指示が来た。支店は30店あったが、それぞれが合計130社ほどの子会社
を持っていることが初めて分かった。聞いたこともない会社が多数あって莫大な利益を出している。そしてその株主には社長がいる。配当もしている。そういう事か・・・・・とは思ったが僕は書類を作っただけだ。地下鉄サリン事件があった年退職した。会社は会社更生法の適用を請け何店舗かは今も営業している。その社長は引責辞任と言う形で退いた。その後東京地検の捜査が入ったが法的には一点の曇りもなかった。その社長も数年前に鬼籍に入った。
ゴーン会長もそういうストーリーになるのではと思っている。
悔しくてタンスにゴーン!

参考図書
「法人資本主[会社本位]の体系」奥村宏
「株式会社と言う病」平川克己