Jazz紳士交遊録vol19 池田篤

池田篤が書いた文章をそのまま紹介したいと思う。
【作文】基礎ゼミを終えて
国立音大では4月に入るとすぐに新1年生対象の(数年前から3年生も)「基礎ゼミ」という授業が行われます。
毎日、先生方による素晴らしいコンサートや講演が開かれ、それについてクラスでディスカッションをしたりレポートを書いたりします。朝から夕方まで、とてもハードで充実した期間となります。
今回は初めて、そのコンサートに出演させていただきました。題目はなんと「モーツァルトのモチーフによる即興演奏」!
「ピアノと管楽のための五重奏曲」の中に散りばめられた沢山のメロディの中からジャズのメロディとなり得るモチーフをチョイスして、新たにコード付けをしたりしながら、まったくモーツァルトには聞こえないであろうジャズの曲に仕上げて演奏しました。
講堂の大ホールで他の室内楽の演奏とブレンド出来るようにあえて生で演奏してみました。そこでいろいろな気づきがありました。音量を落としてもシャープにリズムを出すことの大切さ、聞こえなくなった音は聞こえるようにしなくていいということ…など。
そして今回、思った以上にとても楽しく演奏出来たのですが、大切なことに今更ながら気付いたのです。
僕はこの国立音大の学生だった頃(1982-1986)は、クラシック主体の大学の中でジャズを志す孤独との戦いでした。ある時は先生も他の学生達も宿敵のように感じられて、それに立ち向かうように一人我武者羅に練習していました。
コンサートが終わった後のクラス授業で、ジャズ科以外の何人もの学生達が今回の演奏の事についてスピーチしてくれたり、学内を歩いていると多くの先生方が「素晴らしかったです!」と駆け寄って来てくださったりしました。どうやら学生時代の僕は根本的に大きな勘違いをしていたみたいです。目の前の人に自分の意思や音を素直な気持ちで伝えずに自分で大きな壁を作っていただけだったようで、昔のままの2号館の前で昔の自分に向かって「お前はアホだ」と言ってあげました。
39年経ってやっとこの国立音大の一員になれた気持ちです。
(おわり)
   39年生サックス専攻 池田篤
卒業した翌年池田芳夫4とイースタシアオーケストラで札幌に来た池田を初めて聴いた。素晴らしいと思ったことは覚えているのだがどう連絡を取ったのかは覚えていない。池田に聞くと丁寧な手紙が来たと言う。まだ携帯電話など無い時代だ。池田は肺がんで片肺を摘出している。転移すれば命だって危なかった時期がある。ある時期は池田の音をもう聞けなくなるかもしれないと諦めた時期もあった。今演奏出来ているのは半分奇跡だと思っている。その音には魂が籠っている。その池田が16周年記念第二弾ライブで来る。5月7日、8日東京の若手メンバーが脇を固めてくれる。札幌は又時短要請が出そうな気配である。聴いているときは会話はないので飛沫拡散はあまりないとしか言えない。積極的にぜひ来てくださいとは言い難い状況が続く。外出を自粛している方の為に期間限定のライブCDRも販売する。ぜひ御利用いただきたい。