2021.4.8-10 LUNA 16周年の三重品格

4.8 Unpluged Rock  LUNA(Vo) 町田拓哉(g、Vo)古館賢治(g、Vo)
昨年までのLoud3は、LUNA vs爆音の格闘絵巻だった。そうした有り様はRockのラジカルな魅力をなすものである。それとともに、演奏力とともに台頭してきた‘70前後のRock黄金期の名曲総出演となっていたことが耳の記憶を刺激するものであった。音楽的記憶とは覚えようとしなくても無意識に刷り込まれてしまうことに気づかされる。残るものは否応なく残ってしまうのだ。さて、今夜は、正面衝突ばかりがRockではないことを証明せんとする設定である。撃ちまくる痛快活劇もRockであれば、シェーンの背に思いを込めるのもRockである。Rockなんてと受け流してはいけない、懐が深いのだ。さて、16周年の初日は、新型‘Sとして共演歴の長い町田と古館との顔合わせだ。彼らはともにギターの名手であるが、喉のレベルも人後に引けを取らなく、この二枚にLUNAが絡むとどうなるのか。それが16周年の実験室に課されたミッションである。演奏を目の当たりにすると、三者のハーモニーはナチュラルに心地よく、LOUDと異なるRockの成果を体現するものだったと言える。実験室の課題曲は「Get it on」、「I will survive」、「Desperado」、「A cace of you」、「A song for you」、「To be with you★」、「I feel The earth move」、「Nowhere man」。「Don’t let me be lonely tonight」、「Fragile」、「Johnny be good」、「We are all alone」、「A whiter shade of pale」、「The waight」、「I shall be released」。なお初めて聴いた何曲があった。興味本位に緊急聞き取り調査したところ、★の曲はある年齢層までのスーパー人気曲だったことが分かった。それは清志郎風に「聴いたことのないヒット曲」だったが、今さら知ったかぶりもできない。本日の感想を申し上げる。爆音を武器としないUnpluged Rock、それは鼓膜のケアを必要がないが、毒の回り方には気をつけなければならないというものだ。
4.9 昭和歌謡  LUNA(Vo) 古館賢治(g、Vo)、板橋夏美(tb)
昨年秋口が初演、今回は単なる再共演以上のモノにできるかが注目されるところだ。まずはLUNAレスで古館がかますウエルカムの一発、「兄弟船」でがオープニング。昭和歌謡にそれなりの造詣はあっても、寄る年波に揺すぶられている我ら高齢族、型は古くシケには弱いことを思い知って悲しいというべきか。以後LUNAを招き入れた展開となる。て惑いなき人生賛歌「あの鐘を鳴らすのはあなた」、女の情念とは距離を置くのが身のためということを教えてくれる「北の蛍」、一転ポップな「恋のバカンス」で景気づけした後は、心の汚れを洗い流してくれる「愛燦燦」、当節、気ぃ付けんとならん昼カラ人気曲「二人でお酒を」、LUNAの敬愛する安田南氏に捧げられたという「プカプカ」、昭和歌謡の金字塔「喝采」、大人になりつつある少女が捨てきれない不良の真っ当さに執着する「プレイバック・パートⅡ」、恨みが恨みを誘って‘60の後半に大衆の共感を呼んだ「圭子の夢は夜ひらく」、岡林信康が曲名を繰り返し畳み掛ける「私たちの望むものは」、あまたある漁師もので欠いてはならない「石狩挽歌」、そして後期昭和の賑わいを象徴するエンターテインメント曲「北酒場」でフィニッシュ。古館が敬愛する作曲家の船村徹や玄哲也は、地方から東京に身を移して後、薄れいく望郷の念を生き返らせようと大手との契約に見きりを付け、全国各地を巡りながら改めて日本人の情緒を突き止めようと腐心したと聞く。そうした切羽詰った熱意が礎となっている昭和歌謡には決して一筋縄ではいかない奥行がある。それを知ってか知らずか、LUNAの歌唱は「私なんでも歌えるわ」的なものではなく、原曲から自身の何かを引き出そうとすることが明確に意識されていることが伝わってくる。それが独自の凄みを獲得しているのだと感じさせる。再共演は手応え十分なものに仕上がっていたと確信する。最後に、声のような音色で寄り添う平成生まれの板橋。回を追うごとに昭和に磨きがかかっているが、果たして本人は生まれの和号を超えた地点に来てしまっていることに気がついていだろうか。
4.10  勝負のJAZZ  LUNA(Vo) 本山揁朗(p)菅原昇司(tb)
ほ~う、これが本職なのか。職業に優劣がないように、音楽ジャンルにも優劣がないことを思い知らされた前二日。それでも人は利き足を無視しては四方に飛ぶことができない。やはりLUNAの利き足はジャズのなである。取りも直さずRockと昭和歌謡をさばく上手さはジャズあってのことだ。語らずとも、以下の曲での歌唱が文句なしにそのエヴィデンスになっていた。「I love you」、「Spring can really hang you on」、「I’ve got you under my skn」、「Answer me my love」、「Star crossed lovers」、「Beautiful love」、「Shenando」、「Misty」、「Feel like making love」、「ひとり」、「We will meet again」、「Beautiful love」、「Here’s to life」、「Smile」。
本山はLUNAと初競演である。飲んでも寡黙な本山が、今日は留め金をはずしたように楽しさ行き交う奔放な演奏に徹しており、誕生日を迎えたハズミで勢い24を乗り越した御年34が、一瞬ハメを外したのも貴重なものとして水に流そう。菅原はLUNAとの共演回数を重ねているが、そうした慣れに寄りかかることなく、気迫のこもった演奏を貫いていたのは彼の力量が一級であることを十分に伝えるものであった。
16周年の始まりは、Rockの祭典Woodstockを凌ぐアッという間の三日であった。その祭典に出演したザ・フーに「四重人格」という危ないタイトルのアルバムがある。それには格が一つ不足するとは言え、記念行事の初っぱなは、Unpulgedrock、昭和歌謡そして輝けるJAZZの「三重品格」フェスティバルだったとキレイに締めくくり、概況レポートとする。
(M・Flanagan)