日本映画探訪記vol11 の・ようなもの

「の・ようなもの」このタイトルに注目したい。と思ったのは最近立川志の輔の新作落語「バールのようなもの」を聞いてからだ。「の・ようなもの」は森田芳光監督の商業映画代一作目になる。森田監督の一番有名な作品は松田優作、由紀さおり、伊丹十三が共演した「家族ゲーム」と言う作品だ。家族が食卓を囲むのではなく一列に並んで食事をさせることによって家族の断絶を描いている。森田監督は落語好きでデビュー作では二つ目の落語家を主人公にしたコメディータッチの青春映画になっている。主演男優の名前は思い出せないが下手な落語家の味を実にうまく出していた。二つ目魚っと(ずいぶん前に見たので芸名が微妙に違うかもしれない)は誕生日に先輩たちのカンパでソープに行く。インテリソープ嬢エリザベスを秋吉久美子が演じている。そのエリザベスに「付き合わない」といわれるがその物言いが乾いていた。落ちて風俗に来たと言う印象を持たせない。付き合い方も知性を感じさせる。また魚っとは女子高の落研の指導にも行く。「寿限無」の練習風景が実に滑稽である。その一部員と恋に落ちる。魚つとはその事を正直にエリザベスに報告する。エリザベスは「付き合うのやめる。彼女に黙っていれば・・」と大人の対応だ。「のようなもの」は「彼女のようなもの」を直喩しているとも言えるが「のようなもの」と言う事によって一気に落語的宇宙に連れ出す事を象徴していると感じがした。
「バールのようなもの」は例によって八さんがご隠居に分からないことを訪ねに行くところから始まる。
「ご隠居、よくニュースで泥棒がバールのようなものでドアをこじ開け内部に侵入したなどと報道されますが・・・あれが良く分からないんですがね」
「どこがだね、八さん」
「『バールのようなもの』と言うところなんですがね」
「それは、誰も見ていないだろう・・・だから『バールのようなもの』と言う事によって報道に深みを与えるのだよ」
「そうなんですかねぇ、私は大工ですから事件の日に警官に職務質問されてバールをもっていたら疑われませんかねぇ」
「お前さんが持っているのはバールだろう。事件に使われたのは『バールのようなもの』だから心配はいらんよ」
こういう会話で話は進んでいく。女のようなと言えば女ではない、男である。マグロのようなアボガドであり、一カ月洗濯していない靴下のようなブルーチーズである。
ところが八さんは奥さんから問い詰められる。「スナックの明美はあなたの愛人なんだろう?」
「いや違う」
「愛人なんなだろう。正直にいいなさい」
「いや、そんな関係ではない、愛人のようなものである」
お後がよろしいようで
志の輔はこの映画を見てヒントを得たような気がしてならない。
ちなみに「jazzのようなもの」は大体jazzではない
付記
クリスマスの日しばらくぶりで焼き芋屋が店の前を通った。店ではライブをやっておりKのベースソロが終わった時
いいタイミングで放送が入った「お芋、お芋だよ」
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