東京物語

今日12月12日は映画監督・小津安二郎の誕生日であり命日である。テレビも無い時代親に連れられて映画を見に行った記憶があるが黒澤明の映画は覚えているが小津安二郎の映画の記憶はない。あまりに何も起こらず淡々と進むので子供にとって退屈だったので覚えていないのか親もあまり好きでなかったのかもしれない。ある程度に年を食ってから全作品見直したがここではローアングルのカメラショットなど映像論的なものは省く。昭和はこういう時代だったなあとつくづく思うのである。家父長制の残滓が見て取れる家庭、高度成長期の会社、学校の同窓などの共同体内の付き合い・・・。政治学者・丸山真男が言った「タコつぼ社会」が描かれている。そこには社会はなく、あるのは世間だけである。どの作品を見ても俳優の喋り方が変である。こういう物言いする大人はいたなあ・・と思うのであるその口調は日常ではほとんど聞かれない。小津の言葉を紹介しておく。その謎を解く鍵になるかもしれない。
「僕の生活条件として、なんでもない事は流行に従う。重大な事は道徳に従う。芸術の事は自分に従う」「こういう所から僕の個性が出てくるので、ゆるがせにはできない。理屈にあわなくとも僕はそれをやる」