消費税の想い出とインボイスの罠

夏の海辺に淡い思い出があるように消費税にだって苦い思い出がある。20年の会社員生活で三度ほど死ぬほど仕事をしたと言う思いでがある。その二度目が消費税の導入時の経理システムの構築であった。当時は消費税法の法規集など読んでいる余裕などない。消費税はお客さんから預かっているものと理解していた。それまで有った貴金属や毛皮に課税されていた物品税が廃止された。新しい勘定科目一個増えるだけで全ての伝票類のフォームを変更しレジスターのシステム、各種統計類の表示を変更しなければならなかった。当時は3%であったので今まで殆ど需要のなかった一円玉の確保に奔走した。従業員に呼びかけヘソクリの小銭を持ってくるように指示もした。それでも売り場で釣銭が逼迫しお客さんから「責任者出せ」の御咎めに度々謝る役を演じていた。当時税率は1種類だけであったがそれでも円滑にシステムが流れるまでは枕を高くして寝られなかった。そして今回のインボイスの導入である。その意図は置いておくとして課税業者の事務手続きの煩雑さを考えたら気が滅入る。消費税が導入されたのは1989年である。30年国民を騙し続けてきた本質をインボイスとして結実させようとしている。何度も言うが消費者に消費税の支払い義務はない。元々売上税、付加価値税と呼ばれるべき性質の税である。産業界の要請で価格に転嫁しやすくするための名称変更である。全滅を玉砕、最近であれば汚染水を処理水と呼ぶのと本質的には同じである。インボイス制導入の表向きの意図は適切な税の捕捉である。今の非課税業者が課税事業者になってくれて少しでも払ってくれたらラッキー!・・・程度である。2400億の税収の為3兆円の事務費用をかけることになる。日本の産業は凋落傾向にある。そういう時期相対的に財務省の力が増大する。インボイスで税の捕捉システムを構築した後は複数税率の導入である。今も食料品以外、新聞が軽減税率適用になっている。ナベツネの政治圧力によるものだ。品目によって税率が違うとなるとそこに巨大な利権構造が生まれる。国会審議なく増税、減税の品目が変更されることになる。財務省は産業界に強大な権力を行使できることになる。その結果無数の天下り先が用意されるはずである。そういうことによって得た椅子を陰謀椅子と呼ぶ。