街角情報室vol6

店に来る時の事だ。一羽のカラスが小枝らしき物を咥えて追い越していった。かなりの低空飛行である。ある電柱に舞い降りた。しばらく小首を傾げ思慮しているように見えた。するとそのカラスは向きを変えると隣の電柱に飛んで行った。そこには作りかけの巣があった。どうやら電柱を間違ったらしい。僕はしばらくその巣を見上げていた。一瞬カラスと目があったように思えた。「カア」と一声鳴くとカラスは舞い降りてきて僕の頭近くを掠めていく。「何見てんだよ、カラスだって間違えるんだよ。団地住まいのお前らだって酔っぱらって隣の家のインターホーン、ピンポーンと鳴らしたことあるだろうよ。みっともないから言いふらすなよ」と言ったのだと思う。
同じようなことを経験したことが有る。北大jazz研の定期演奏会を聴きに行った時の事だ。ステージの転換時にウトウトしていると「海老蔵」と呼んで僕の頭を叩く人間が居た。海老蔵の様な頭をした部員がいるのだ。僕も海老蔵と結果的には同じような頭になっている。僕は振り向くと「海老蔵はそこだよ」と指さし教えてあげた。間違えた部員は一瞬固まると「カア、カア」といって立ち去った。たぶん「すいません、申し負けありません」と言ったのだと思う。