諸行無常

92歳ともなれば残されている月日はそんなに多くないと言う事は分かる。小説を読んでいたとする。残り数ページだ。スパイ小説ではないのでどんでん返しはない。話は淡々と進む。母親の人生はそういうものであった。だがページをめくった途端「完」と言う文字一字だけ印刷されていて残りのページは白紙である。母親の死の印象はそういったものであった。何度電話をかけても通じなかった。駆けつけると居間で倒れていた。さすがに安らかな表情とは言えなかったが苦しんだようにも見えなかった。亡くなった当日には電話で話もしている。死因は循環器系の疾患であるらしい。だが亡くなる前の週に定期健診で病院に同伴もしている。いくつか検査をして「いいですね。来月又見せてください。お大事に」であった。
諸行無常
全く実感がわかない。