2018年 レイジー・バード・ウォッチング

 これまでも悪天候によって、中止になったりメンバーが揃わなかったりはあったが、今年は2月3月の断続的な吹雪、近年は常連さんのようにやって来る台風、9月の胆振東部地震など、平穏な暮らしに影を差す自然の猛威に晒された。それはLIVEスケジュールの変更を余儀なくしたが、最小限の影響に食い止められたのではないかと思う。
 それでは簡単に振り返る。年明け早々の峰さんを皮切りに、菊池太光、楠井五月DUO、2月荒武裕一郎(p)・三島大輝(b)4、実力を見せつけた松島啓之4、3月石井章3with池田篤、田中菜緒子(p)3。4月RockのLUNA、ハクエイ・キムのSolo、気鋭の魚返明未(p)3、楠井バラエティー、5月北島佳乃子3。6月清水末寿(ts)4、本田珠也3、大石・米木DUO、7月円熟の中本マリwith大口・米木。9月JazzのLUNA、荒武4、10月清水くるみ・米木DUO、ドクトル梅津4、11月驚異の鈴木央紹4など多くの道外ミュージシャンの演奏に接することができた(楽器を付記しているのは初聴き)。また、サポートには餌を求めて人の生活圏に降りて来る野生動物のように若井俊也、西村匠平らが出没していたことを加えておく。彼らと共演する在札勢として重鎮の彰太さん、朋子さん、岡本さんカニさんの健在ぶりや、本山禎朗、中島弘恵、高野雅絵といった若い世代の健闘ぶりも印象に残る。また、現住所を特定できない竹村一哲のハード・ワーク、そして山田丈造の特筆すべき飛躍は新鮮な感動を呼んだ。
 2018年を俯瞰すると、わが国のジャズ・シーンを担って来た世代と担っていく世代、それぞれの聴き比べと両世代の共演に焦点が当てられていたことが見て取れる。一般的サラリーマンには60才と30才の見比べはあっても対等な協働はあり得ない。ミュージシャンは実入りという重大要素を除けば羨ましい世界にいると思う。今年も期待を裏切るものは無かったので活力が湧くというものだ。余談になるが、東京の演奏家の中には、終演してから無性にジンギスカンを食べたがる肉食系がいるのを何度か目の当たりにした。夜の夜中にあんな凭れるものをと不思議がる干支がSheepの筆者なのだった。
 さて、今年も終わろうとしているのに、一向に終わる気配のないのがLB名物“腹立ち日記”だろう。この国は余りにも無秩序にブレているので、スイングの何たるかを説こうとしているように見える。時の権力者たちは、最も誤魔化しを排除しなければならない商売道具の“言葉”を極限まで劣化させてしまった。どうやらこれが彼らの汚いオリジナル兼スタンダードになっていて、これを糧に生き延びているようなのだ。LIVEで商売道具の“音”を誤魔化したら間違いなくお客さんは去っていく。これが真っ当な世の中である。かつて、演奏前に“札幌で最も汚い店”と逆説を吐いた超有名ドラマーがいた。灰皿と金持ちは溜まるほど汚いというが、このLIVE会場では喫煙者は少数派に転落したので吸殻が溜まらない、資産家風情も見受けられない、つまりここは汚くないと証明して、いや強引なロジックを押し付けておく。腹立ちの下りで少し熱くなったのでリットしながらエンディングとしよう。LIVEに来られる皆さん、来年もまた共に楽しみましょう。そしてごく僅かな読者の皆さん、よいお年を よいお年を よいお年を。
(M・Flanagan)