2018.9.6 Trio De るなんぴる

LUNA(vo) 南山雅樹(p)菅原昇二(tb)
丁度1年前、ブラックアウトで札幌の灯は消えていた。辛うじて北24条界隈は部分復旧下にあり、ギリギリのところでLUNAの10年連続ライブが挙行できる運びとなった。首に懐中電灯を下げて何とか会場に辿り着いたのを思い出す。この特殊事情からその日は予定曲の多くが差し替えられた。災害とシンクロしない「明るい表通りで」のような曲を歌う訳にはいかなかったのだろう。そんな中での最終曲「ナチュラル・ウーマン」の熱唱は今も印象深い。さて、今回は何ともイージーなツアー・バンド名ではあるが、それを覆すシリアスなライヴとなるのか?それを気に懸けながら追ってみることにしよう。ひとまず選曲の妙が織りなす英語、ポルトガル語、日本語による世界旅行を楽しむことが出来たとしておく。曲名が余り紹介されなかったので分かる範囲に限定されるが、かなり凝ったアレンジの「サマータイム」からスタートし、ブラジルの蝉「シガーハ」、スタンダード「ジス・オータム」、スキャットを駆使したブルース、悲恋がテーマの日本語の曲、J・レノンの「Love」などが1ステで採り上げられた。2ステは再びブラジルに飛んだ後、わが国にとんぼ返り、“ざんし”と聞こえた失意の曲。次は安部公房の作品に武満徹が曲を付けた「他人の顔」、郷愁をそそる旋律とは裏腹に、歌詞はホラー映画並みに怖い。このあと懐かしくも思いがけない曲が現れた。多分、筆者は四十数年ぶりに聴いた「教訓」。曲も意外だったが、歌詞を断片的に覚えていた自分が照れくさい。これは曲の生命力を気付かせてくれる当夜の掘り出し物。最終局面は必殺パターンの「ヒア‘ズ・トゥ・ライフ」、曲名不詳だが聴き覚えのある魅力的ブラジル曲、そして「諸行無常」にてFine。ジャッジの採点では、燃焼部門LUNA、小粋さ部門NAN、マイルド効果部門PIL、それぞれ高得点をマーク。人生色々なことがあるが捨てたもんじゃない、と思わせるような“Trio-De-るなんぴる”の『今夜は最高!』ライブでした。
この蛇足は失礼に当たらなければよいが、LUNAの話し言葉は、その声の転がし方が気のせいかアジアの歌姫テレサ・テンに似ているような気がする。ホーリー ジュン ザイライ(いつの日君帰る)。ジャズに?ロックに?歌謡に?何処に帰るのだろうか、ヒヒヒ。
(M・Flanagan)