2022.7.15 Kejime Collective

広瀬未来(tp)高橋知道(ts)渡辺彰汰(p)古木佳祐(b)山田 玲(ds)
 過去にも記述したが、6、7年くらい前から東京で芽吹く若手ミュージシャンのライブが継続的に企画されて来た。若井(b)という慧眼の持主をエージェントとして多数のまだ見ぬ若手が送り込まれて来たのである。今回のバンド・リーダー山田玲(以下「アキラ」という)もその内の一人だ。それまでは名のある演奏家を聴きに来るという手堅い基準に寄り掛かりがちであったが、その頃から寸尺掴めぬ危うくも新鮮な環境に触れることが出来るようになった。LBでは東京でも実現されていない組み合わせはよくあることだが、今回はレギュラー・バンドである。レギュラー・バンドには、是非は別として割と台本どおり纏めてしまう場合と意図を共有する者同士が自由度を高めながら纏まっていく場合いがあるように思う。さて、このバンド(Kejime Collective)の針はどちらに振れるだろうか。今回のライブは彼らの新作『Counter Attack』のリリース記念を兼ねているということで、選曲はオリジナルで占められるそのアルバムからのものである。実はこれまでアキラ以外のメンバーを聴いたことがない。なので何度も目を開閉し、観察したり聴き入ったりを繰り返した。夫々について感想を並べてみよう。冒頭から唸らされたのはtp広瀬である。抜群の切れ味・フラつきのなさは、気分を引っ張ってくれるのに十分と言ったところだ。Ts高橋は黒光りする艶やかなトーンからアイディアに満ちた展開力が聴きどころ。しかも玉切れしないのは見事である。P渡辺はスキを見せないフロント2管に対し、強く割って入るようなことはなく、あえて隠し味を添えることでバンドを引き立てることに徹していたように思う。だがソロを執った時の腕前は並ではない。B古木はウッドとエレベを使い分けでいたが、古きをたずね・・・などと言っている場合ではない、生粋のグルーブ野郎であることが分かった。個人評からバンド評にいこう。まずそこにレギュラー・バンドならではの総合力があるのを感じた。互いの持っているものを最大限に引き出し合おうとする信念のようなものが、会場を席巻していたと思えてならない。時に、笑いを誘う器用なひと幕もあったが、取り組みが大真面目なので、単なる余興とは明らかに一線を画するものだったと言えよう。総じて何か新しいものへの追求心のようなものが、台本にない熱いステージ・ワークへと導いて行ったに違いない。その熱気を冷まして締めくくろう、私たちはドラマーそしてバンド・リーダーとしてのアキラの底力を見せつけられたのである。演奏曲は「African Skies」、「It’s A Hustle」、「Mr. K」、「Counter Attack」、「Kejime Island」、「A I」、「Mouth Drum Battle」など。
 その昔、学研のグリップ・アタックという参考書があった。後日、アルバム『Counter Attack』を聴いてみた。今のいま、表紙に“kejime Collective”と題された会心の参考書を手にすることが出来たわい。
(M・Flanagan)