Jazz紳士交遊録vol14 鈴木央紹

鈴木央紹と付き合うようになってからまだ10年ほどである。鈴木央紹を連れて来てくれたのは原大力である。原を連れて来てくれたのは米木だ。米木と知り合わせてくれたのは神の思し召しである。
テナー奏者で知り合った順で言うと高橋知己、井上俊彦、臼庭潤、峰厚介そして鈴木央紹と言う事になる。先の四人は大雑把に言って申し訳ないがテナーらしいテナー・・・テナー界の王道リ・ヘップバーンである。央紹のテナーは対極にあると思った。音色は甘いが軟ではない。フレージングは伝統に根ざしているが近未来的である。それをほとんど完ぺきと思われるアティキュレーションで音を紡いでいく。いくら早いパッセージを吹いても忙しく聴こえない。アウトバーンをベンツで150キロで走っているときの乗り心地に似ている。
そして、圧倒的な読譜力。単にオタマジャクシが強いと言うレベルではなく譜面の奥にある作者の意図を見抜く力がとてつもなく早い。だからこちらのメンバーとやってもらう時にもオリジナル中心であっても安心して聴いていられる。初見で30分のリハ・・・・それでも高いレベルの演奏を聴かせてくれる。
時々耳に入るやっかみ半分のコメントでは「あまりうまくてもなあ・・・」とか「うまいけどつまらない」とかがある。好き嫌いは誰にでもある。それはいい。だが下手だけど素晴らしいという演奏家がいるなら教えてほしいものだ。
仕事は忙しい奴に頼めと言う格言がある。ミュージシャンにも当てはまる。央紹は連絡も早い。だからトントンとライブスケジュールが決まっていく。今年はのべ10日間ほどやってもらった。コロナ禍でルパンなどのホールでの仕事がほとんど飛びlazyのような小さな店で額に汗して働く意味を知ったようだ。ざまーみろ。
「Go toキャンペーンで安いパックが見つかったがどうしましょう」と提案があった。
乗ろうじゃないか。目標ができればその月まで持ちこたえる方策をひねり出さなくてはならない。
次鈴木央紹に会えるのは1月中旬になる。