Max Roach&Clifford Brown『IN CONCERT』

名盤・迷盤・想い出盤 
 前2回の2枚はレイジーにおいて見つけ損ねたというコメントが加えられていた。本コーナーは多少の連携プレーも必要であろうという良心を働らかせ、容易に引っ張り出せそうな1枚を選定することにした。そこで白羽の矢を立てたのがMax Roach&Clifford Brown『IN CONCERT』である。これが即座に見つからなかったら、定番フレーズのチャーリー閉店ものだ。話が空転しそうなので本論に向かおう。よくあるJAZZ名盤100選などというランキングものに、ブラウニーが漏れることはないだろう。今回は「Study In Brown」や例のヘレン・メリルも考えたが、本作を割って入らせることにした。ブラウニーは若くして他界したので残された音源は多くはないが、どれも名演揃いと言えるので悩ましいが、本作を選択したのは筆者にとって忘れられない1枚という一点による。それは最初に購入した5枚の中に入っているからだ。とかくJAZZは難しいと言われ、筆者も漏れることなくその一人であった。そういう先入観を解きほぐしてくれたのがこの作品だった。「JAZZってこんな感じなんだ」と印象づけられ、この時を起点に細々ではあるが長く聴き続ける心支度が出来上がったのだと思う。ここに収められている「JOR-DU」、「I Can’t Get Started」、「Tenderly」その他の曲は本作によって知った。A面とB面とではサックス、ピアノ、ベースはメンバーが異なっているが、それに構う必要なくブラウニー1発で聴くことができる。天は二物を与えずというが、ブラウニーはそれに背いたことと引き換えに不慮の事故に遭ったと言うと無理があるのだが、そうも思いたくもなることには無理はないだろう。ブラウニーの演奏は想像力に溢れ、端正でしかもエネルギッシュだ。なおかつ本作はライブ盤なので臨場感もたっぷりだ。稀にブラウニーを好まない人がいるらしいのだが、おそらく彼の演奏に邪気がやや不足していると感じている人たちである。筆者はこれを支持しようとは思っていない。ブラウニーと薬物の関係は全く知らないが、この演奏が録音されたのは1954年であるから、時代が毒づいていたのであって、ブラウニーはそうした時代の空気をよそに超然と演奏していただけではないのか。音楽においては古い日付の演奏が後の時代のものより鮮度を保ち続けているものがある。この演奏もそれに含まれる。実感を以て言うならば、本作はJAZZの入門盤として最適であるとともに、いま聴いても輝きを失うことのない生涯盤でもある。このアルバム・タイトル「In Concert」は、本当は「Max Roach All Stars With Clifford Brown」だ。だが、筆者はブラウニーのアルバムとして聴いている。多分これからもそうなるだろう。多くのJAZZファンの心の中は果てることなく”I Remember Clifford”なのだと確信している。
(JAZZ放談員)

master’s comment notice
好きなミュージシャンは・・と聞かれたならマイルス・デイヴィスと答えるが質問が好きなトランぺッターは・・・・であったならクリフォード・ブラウンと答えるだろう。暖かく太い音色・・・マイルスの対極にある。牛さんは邪気がないと表現しているが僕は疾走するクリフオード・ブラウンのtpを聴いていると完璧なフォームで走るぽっちゃりした穢れを知らぬ女子陸上部員の中距離の走りを想い出すのである。
タモリのギャクを紹介しておく。アメリカ人から「Do you remember Pearl Harbor」と聞かれたので
「I remember Crifford」と答えたという