日本映画探訪記その6 夜の診察室

レンタルビデオ店に行くとついつい余計なものまで借りてしまう。これもその典型。決してお勧めしない。
この映画を頭髪が茫々だった頃映画館で見たことが有る。夜の悩みを精神科医に相談し解決していく過程の物語である。夜の悩みと言うのは僕も今直面しているトイレが近くなって夜良く眠れないという問題ではない。あっちの夜の悩みである。あっちってどっちだ…と聞くのは止めてもらいたい。あっちと言えばあっちなのだ。小学生の君はまだ分からなくてもよろしい。
松坂慶子のデビュー作である。19歳の松坂慶子がそこにいる。五番街夕霧楼や蒲田行進曲で見せる大女優の風格は微塵もない。パンパンにはち切れんばかりの女子大生なのだ。あれ、あまり綺麗でもないと思った。綺麗でないと言っても程度問題である。池田篤が時々口にする「僕、譜面強くないので」と言う発言を真に受けてはいけない程度に綺麗でないと言う事である。なぜこんな映画を見に行ったのかは覚えている。とうとう「こんな映画」と言ってしまった。夜のお悩みを解決する映画に松坂慶子が出ているのである。当然おバカ男子は期待するのである。監督も心得たもので「金返せ」と暴動が起きないようにサービスショットは用意してある。まあ、そういうコメディタッチの映画である。だが何十年もたってもう一度見ると発見することもあるものだ。松坂慶子は父親の病院で働いている。そこで患者の夜のお悩みを色々聞いて耳年増になっている。憧れの年上の作家がいる。何とか気を引こうと背伸びして病院で聞いたことをわがことのように話す。
オードリーヘップバーン主演の「昼下がりの情事」と同じである。ここでのオードリーはゲーリークーパーに恋をする。彼女の父親は私立探偵で浮気調査などのファイルが山ほどある。彼女はそれをこっそり見てわがことのように話すのである。父親役はモーリス・シュバリエでオードリーが恋をしているのを見抜く。有名なセリフがある
「恋をしている女の子はうつぶせで寝る」
こちらの映画は文句なくお勧めである。オードリーが食べてしまいたくなるほど可愛らしい。
「夜の診察室」はお勧めはしない。「見るなよ、見るなよ」と言われると見てしまう人がいるかもしれないが当局は一切関知しない。