日本映画探訪記vol15 戦場のメリークリスマス

この映画監督大島渚は軍隊経験がない。それまでの戦中派が制作した戦争映画とは一線を画している。軍国主義を叩き込まれて皇軍として戦地に赴きそして完膚なきほど叩きのめされた恨み辛みが全編を支配している映画はそれが娯楽映画として制作されていても暗い影を引きずっている。この映画は情話としての戦争映画を否定している。設定はインドネシアの捕虜収容所と言う事である。坂本龍一演ずる所長とデビット・ボウイ演じるイギリス将校とのホモセクシャルをにおわせる関係と北野武が演じる軍曹と通訳の将校ローレンスの奇妙な友情を縦糸、横糸で物語は進行していく。女性は一人も出てこない。映像も妙に明るい。坂本龍一のヨノイ大尉はYMO時代の化粧を施されている。当時映画館で見た時は教授が大写しで出てくる場面を写真に収めている女性がいたものだ。
捕虜収容所の生活が日本の視点のみならずイギリスの視点でも描かれている。デビット・リーン監督「戦場にかける橋」に共通するものを感じた。
大島渚監督は「大日本帝国」と「連合艦隊」に出演した俳優は絶対に使わないと言ったそうである。それで坂本龍一や北野武やデビット・ボウイといった素人が重要な役で出ることになった。うまい演技とは思ないが映画の出来の足を引っ張っているとも思えない。デビッ・ボウイには敬意を払いパントマイムをさせている。
エンディングも坂本龍一の作曲したメロディに乗せて北野武が「メリークリスマス、ミスターローレンス」と繰り返すセリフで終わる。妙に明るい。情話を排している