2017年 レイジー・バード・ウォッチング

 師走の定番は今年の十大ニュースである。このランキング路線に乗らず、のらりくらりと2017を振り返ってみよう。第一四半期では何といっても12周年ライブだろう。ピアニストとして異能の持ち主キム・ハクエイと天才肌の鈴木央紹との共演が叶った。ぶっつけ本番での完成度がレベルの高さを窺わせていた。才人は違う。この後が問題だ。飲み会のお開きの頃に新しい奴がやって来て悪夢の飲み直し。このパターンを仕組んだのが、そう春の嵐ことLUNA&Loud3だ。ロックの狂喜乱舞、輝かしき歌毒が全身に回ってしまった。余談になるがモリ・カケ並みの手口で姑息にリクエストしていた輩がいたと聞く。「サンシャイン・ラブ」「ホンキー・トンク・ウイメン」「フォーエバー・ヤング」。この裏取引は重罪、証拠書類の処分と逃げの一手は許されない。ところで3月は学生、社会人ともに異動時期でイベント満載だ。LBもご多分に漏れずこの“地獄の季節”に首まで浸かっていたらしい。それがため4月は虚脱感に襲われ、ブルー一色になるのだそうだ。そんな中でも3月と4月をひと跨ぎした若井俊也の本格トリオは、ひと時の濃縮清涼剤の役割を果していたのではないだろうか。磨けば磨いただけ発光する上昇の3人。連休明けにはダウントゥ・アースの本田珠也カルテットが登場。このガチンコな快感、聴かなきゃ損々。「宮古高校校歌」が頭に焼き付く。5月の終わりにLB財団の交流事業でカナダに長期派中のマークが一時帰国、つかのま旧交を温めたのは心休まるものだった。話を戻して、珠也は6月にZEK!のCDリリース・ツアーの一環で再登場。アアアー・アアッ!ド迫力の2日間。そして6月恒例の大石、ZEK!を脱北した米木さんとのDUOだ。筆者のこだわりだがDUOは面白い。7月に入ると我らが池田篤。ソリ身で吹きまくるアッちゃんは“凄い”の一言だ。例年8月のところ一月前倒しとなった臼庭メモリアル・ライブ。今年はトロンボーンの後藤とギターの和泉が参集。欠いてはならぬ「アンチ・カリプソ」ほかJazz-rootsの曲多数が演奏された。初めて聴いた後藤の音は太く分厚くデカかった。今年は臼庭の7回忌になる。もうそんなになるか、という思いだ。実は7回忌に合わせ臼庭の母上が譜面集をCD付きで1冊にまとめられ、それを札幌で縁のある人に進呈して頂いた。ここには母上のご苦労と臼庭の思い出がギッシリ詰まっている筈だ。高値で横流しするつもりはないが、もったい無くて筆者は未だ包みを開封していないのだ。8月には、纐纈雅代が初登場。モンク漂う独創的な演奏だ。このアルトは注目しておいた方がいい。9月に入ると再びLUNA登場。南米もの一色の歌唱に菅原のトロンボーンが抜群の効き目。月末にはチコさんだ。およそ30年振りという加藤崇之とのDUO、加藤のバッキングにプロの恐ろしさを見た。そしてチコさんの「Eighty Naked Soul」、CDのタイトルどおり永遠にソウルの塊。10月は、キム・ハクエイのレギュラートリオ。プログレ特有の高等テクニックと創り出される雰囲気はこのバンドでしか体験できないものだ。いよいよ年末に向かう。11月は若井俊也のトリオ、春先とは異なるメンバーだったが、本道が誇る一哲や丈造と同世代の若者集団が着実に台頭して来ていることを突き付けられた。そうはさせじと月末には鈴木央紹のツワモノ・カルテット。久しぶりの原大力の気持ち良さに目がウルル。ギターの荻原は正真正銘の逸材だ。そして最終月。先ごろレポートした大口・米木珠玉のDUO。聴き逃していたら今年最大の悔いになっていただろう。最後に一つ付け加えたい。この秋口のことである。巷で言われている“岡本さん、あわや事件”だ。岡本さんのライブではなくライフに関わる一大事が起きたのだ。いまご本人は不死鳥のごとく現存している。そして、今日(14日)本田珠也と対決する。その勇姿を観に行かぬ訳にはいかぬ。では、一握りの読者の皆さん、よいお年を。
(M・Flanagan)