年明け早々、悲報が飛び込んできた。糸が切れるがまま鈴木央紹の演奏を聴き続けていたことを思い出す。およそ15年前のレイジー初登場以降、彼の主要ライブには足を運んで来た。演奏する姿や幾つかの会話が、不規則に脳裏を巡った。昨年4月のレイジー20周年の素晴らしい演奏が最後となったが、不動の足跡が語り継がれることによって、彼が私達から立ち去ることはない。そしてこの1月は彼と共演歴のある地元演奏家のライブに何度か足を運び、鈴木央紹を偲んだ。悔しいが文脈を変えなくてはいけない。ここ数年来、レイジーではジャズに拘らない企画が恒例化している。新しいところでは、按田佳央理(fl)と亀岡三典(g)。このクラシックDUOによる淀みのない音色には洗われるものを感じたものだ。ときは2月。長沼タツル・斎藤里菜のDUOを聴いた。長沼の演奏は思っていたよりも熱かった。この日から彼を”いぶし銀のエモーション”と呼ぶことにした。次もDUOで按田佳央理・斎藤里菜(公称「かおりな」)。格調高くなおかつハート・ウォーミング。年甲斐もなく最も寒い2月は早く春を呼び寄せるために日数が減らされているのだと思ってしまう。3月になると、松原慎之介4(p布施音人、b高橋陸、ds中村海斗)、このあたりの頼もしい勢力がレイジーに根付いて来ている。どういう編成であれ、彼らはまたやって来るだろう。意表を突かれたのが三嶋大輝のベース・ソロだ。この活動は三嶋の強く望むところだったらしい。店内はガラガラだと踏んでいたが、ところがどっこいだった。気を緩めることなく格闘する三嶋の集中力は見上げたものである。売れだしてもアグラをかかぬ謙虚な姿勢は清々しい。4月、恒例の大催しは翌月送りになっていた。隙をついて田中朋子6を聴いた。これは朋子さんの集大成に位置づけられるアルバム「VEGA」のリリース記念だ。名曲群にシンクロして過去の名ライブの光景がよぎる。レイジー・ライブの歴史を語るに欠かせない人だ。そして5月、21周年記念。壺阪健登、本田珠也、池田篤、古木佳祐。ジャズの醍醐味であるスリルもあれば、しっとりとしたと深みもたっぷりだ。Golden Strikerたちによる贅肉カットのせめぎ合いにねじ伏せられた。周年記念は毎年Lazy Bird Of Paradiseとして積み上げられている。聴かぬが損々。前半最後の6月。復活、大石・米木DUO。米木さんの健在ぶりを確かめられただけで余言なし。後日エレべからウッドに持ち替えた米木さんと鹿川が対峙、ひと月前の周年記念時に鹿川は本田クリニックでジャズ魂の応急診療を受けており、その甲斐あって鹿つめらしさは何処へやら。
後半。7月はまだ肌寒い日が残るはずの札幌だが、先月来夏が始まっていた。暑気払いと行きたいところだが、そうはさせじと柳沼佑育。柳沼の厳選により平倉初音(P)と伊藤勇二(b)が抜擢された。レア・アースこと平倉の非凡なノリとヘビー級伊藤の太さに押し切られた。陰の主役柳沼は汎用性に富むプレイで聴きどころを演出、流石のスキルだ。8月は地元ミュージシャンのライブを幾つかチェック。下旬には村田千紘のレギュラー・トリオ。アルバム「In The Mood Of Chet Baker」のメンバーによるリリース記念。危なげなさとスリルの両立g平田晃一とb若井俊也に、チェットの遺伝子を継ぐ村田の端正な音色が沁みる。9月に入ると日を追って三嶋、次いで柳沼、更に池田と松島が加わっていく。誰と誰の編成か分らなくなり、おまけにディジャブも割り込んできて整理がつかない。とは言え、最終合流点の2管クインテットが、バピシュに突き進む様は圧巻であった。翌日から家でバップばかり聴いてしまった。日を置いてこの月恒例のLUNA、久々のヴォーカルだ。彼女のステージは工夫心が旺盛で、歌の王道から急に脇道に入ったりする。マカオで人気を博したというコミカルな「みそしるのうた」が面白かった。10月早々峯岸晶子さんというピアニストが和服で登場、米木、奥野、舘山という布陣でオリジナル中心に秘めてきた思いを吐露、耳慣れていない旋律が逆に新鮮な印象を残していった。次に松原えりさんのヴォーカル。毎年聴いているが、この人は余計なことを考える必用のない本格派で、歌の過行くままにニンマリして聴いていれば、それよいのだ。11月は魚返明未レギュラー・トリオ。昨年魚返は弦を2本切っていった。今年も危険な瀬戸際プレイが噴出していたが、絶えざる理知が底流にある。規律違反のデリカシー、それが魚返だ。このライブはつい先日のことなので、余熱がたっぷり残っていて耳に新しい。独断選考で今年のレイジー・アワード(また来る優先権)進呈。
時すでに12月、ここまで頭の中で順不同になっていた今年のライブのあれこれを、月日の流れに沿って大まかに振り返えってきた。素晴らしいライブを演りきったミュージシャン各位には、若手・ベテラン問わず敬意を表しておく。そして「Memories Of You」、鈴木央紹に特別の思いを込めて感謝の意を表しておきたい。
(M・Flanagan)
