jazz紳士交遊録vol3

長いイントロから始まる。角川映画で「キャバレー」と言うのがあって野村宏伸が主役のsaxプレイヤーを演じていた。テーマ曲が「left alone」で野村が吹くシーンがあった。運指がでたらめでがっかりした記憶がある。「愛情物語」の主役タイロン・パワーはピアニストの役をするにあたって一年間他の仕事を一切入れずピアノの練習に励んだという。それが役作りに生きている。ピアノを弾くシーンではそのままの音を使えるレベルであったが、サントラではカーメン・キチャバレロが吹き替えをやっている。「キャバレー」では勿論吹き替えで大友義夫が吹いている。大友義夫は僕がライブハウスで聴いた最初の東京のプレイヤーであった。艶やかなアルトの音色で「男が女を愛する時」は死ぬほど聞いた。
先週峰厚介さんに来て貰っていた。若々しい演奏で有ったが年齢を重ねないと表現できない何かもあって素晴らしかった。峰さんは若いころalt saxを吹いていてマル・ウォルドロンとアルバムも残している。勿論「leftlone」も演奏している。随分前峰さんと「キャバレー」の話になった。本家本元とやっている人のところへ話がいかなかったのか聞いてみた。
「僕の所へ来たよ。断ったら大友君のところへ行ったんだよ」
やっぱりと思った。
峰さんは愛する臼庭潤の師匠でもある。時々洒落を言う。
右手をぶらぶらさせて「こういうトランペッター知ってる?」と聞く。僕はすぐわかったが何人か外すと嬉しそうに目を細めて言うのである。「フレディ・ハバード・・・・・・・震える手ハバード」
峰さんが言うから笑うのである。
レパートリーに「アール・デコ」と言う曲がある。作曲者はオーネット・コールマンの盟友、ドンチェリーだ。共演者に聞いたのであるが。これを峰さんは「ドンサクランボ作曲。アールデコ」と紹介する時があるらしい。あまりにもそのままなので何も言えなくなる。
洒落は臼庭にちゃんと習うべきだったかもしれない。