なんとなく vol8

初めて買ったjazzのLPは今でも覚えている。ケニーバレルの二枚のLPがカップリングされたあまり有名ではないLPだった。🎸ギターでjazzを弾いてみたいという欲求が目覚め始めた頃だ。何も知識がないままレコード店でライナーノートを読み、試聴をくり返しどれを買うか二時間ほど悩んでいたことを覚えている。昼食を抜いて同級生の女の子のおにぎりに縋りながら買うのである。慎重にならざるを得ない。そのLPに入っていた「テンダー ジエンダー」と言う曲が大好きになりそれこそ死ぬほど聞いた。バレルのアドリブも歌えるようになり、会社を辞めてから本格的一歩手前の熱意でjazzギターをやるようになった時にはバレルのソロをコピーで弾けるぐらいになっていたのは高校の時散々聴いたからなのだ。jazzにはよくわからないが憧れみたいな感情が芽生え始めていたがそれは大人のお姉さんをこっそり好きになるのに似ていた。PPMを聴き、返す刀でCSN&Yを聴き、返り血浴びながらJazzを聴くという多感な時期を迎えていた。それもちっともうまくならないサッカーをやりながらの話だ。少年には時間が不足していた。
ある時軽音楽の団体であるSING OUTにNHKから高校生のフォークグループの番組を作るので出演依頼が来た。一緒にやっているO沢の以前やっていたグループが出ることになった。「お前ベースやれ」とお鉢が回ってきた。曲はPPMの「ロック天国」。ボブディランがエレキも持ってフェスティバルに出てブーイングを浴びて以来フォークにも新しい波が押し寄せつつあった。テレビに出るという事は高校生にとっては一大事である。
だがベースと言う楽器は弾いていて上がらない。どうせ低い音でボンボンやっているだけだから皆分からないだろうという舐めた考えを持っていた。ライトがまぶしかったのを覚えている。ステージ衣装はレンガ色のタートルネックセーターを着た。カレッジフオークの定番衣装である。
オンエアーの日土曜の確か一時からだった。ビデオデッキなどない時代だ。すべてを目に焼き付けようとテレビの前で待っていた。あれ、白黒放送だ・・・・レンガ色のセーター買わなくてもよかった。