ハードボイルドな日々 その1

ハードボイルド小説なんぞは舐めていた。45年ほど前の話である。なめていた分痛い目にあった。英語の授業でR・チャンドラーの「killer in the rain」を教材で使う講座を履修した。日本語を全く話せない外人講師による英語での授業で試験問題も英語である。見事にわからなかった。難しい単語はあまりないのに受験英語では全く歯が立たなかった。どうやって単位を取ったのかは覚えていない。下駄をはかせてもらうお願いをした記憶もない。大体「下駄をはかせてほしい」というニュアンスを英語で言えるはずもない。そんなことを言えるのであれば「優」でクリアできたはずである。出会いは散々であった。
チャンドラーの小説は何本かは映画化されている。その主役のフィリップ・マーロウに感化されてしまった。
「タフでなければ生きられない、やさしくなければ生きている資格がない」こんなかっこいいセリフを日常生活の中で言ってみたいものだと思った。
主役のマーロウ役はロバート・ミッチャムがイメージに合っている。
「さらば、愛しき人よ」は都会で生きる人間の孤独感が詩情漂うように表現されている。酒の飲み方も教わった。
「ギムレットを飲むのには早すぎる」
口開けのbarに行って時計を見ながらバーテンダに「もう、ギムレットを頼んでもいい時間ですかね」とか言ってオーダーするのである。ちゃんとしたバーは「このガキ何かっこつけてんだ」とは決して言わないものである。