ハードボイルドな日々 その2

カサブランカ
この映画はハードボイルドの要素もあるが一大ラブロマンスでもあり戦意高揚の意図も盛られたてんこ盛りの内容になっている。
初めてこの映画を見たのはジャブ70ホールと言う名画座の最前列の前の床であった。観終わった時には首が元に戻らなかった。
ハンフリーボガード扮するリックはカサブランカでバーを営んでいる。時代は1930年代後半、ヨーロッパではドイツが侵攻している。その迫害から逃れてきた人々がカサブランカに集まってくるという設定になっている。実際、俳優もナチの弾圧を逃れてアメリカに亡命してきた人が大勢出演している。アメリカはまだドイツに参戦していない。カサブランカは「白い家」の意味で「ホワイトハウス」象徴でもある。このバーにイングリット・バーグマン扮するイルザがレジスタンの闘士である夫ラズロと尋ねてくる。イルザは昔の恋人である。再会した日のリックはいささか女々しい。「この世に星の数ほどバーがあるのによりによってなぜ俺の店に来るのだ」とピアニストのサムに愚痴るのである。ハードボイルドの要素は感じない。あなたならどうする。僕の答えは出ている。それは後でお話しする。
この映画の魅力に数々の名セリフがある。
リックに惚れているイボンヌがリックに「昨日はどこにいたの」と尋ねる
「そんな昔のことは覚えていない」
「今日の夜は・・・」
「そんな先のことは分からない」
ここはハードボイルドですね。女性に言い寄られて袖にできる男性は滅多にいないと思うがどうだろう。
「君の瞳に乾杯」リックがイルザに言うセリフである。一回だけであればカッコいいのであるが何回も言うので成金の親父がクラブでホステスに肥え太った財布を「どうや」と何回も見せているようでハードボイルではない。
そしてラストシーン。イルザとカサブランカを出国するのはリックなのかラズロなのか。イルザはリックと行くつもりでいる。リックはイルザにラズロと行けという。
「俺達にはパリの思い出がある」リックカッコいいですね
そしてラズロに奥さんは昨日パスポート欲しさに俺をまだ愛していると嘘まで言ったと弁明する。すべてお見通しのラズロは「一緒に戦いましょうと」手を差し出す。ラズロもカッコいい。逃亡をかぎつけたドイツ将校ストラサーが追ってくる。リックは二人を逃がすために打ち殺す。警官が来た時に今度は仏警察のルノーがリックを庇い犯人を捜せという。そして最後の名セリフ
「美しい友情の始まりだな」
It’s beginning of beautiful friendship.このセリフは外国のお客さんが来た時に時々使わせてもらっている。
この映画を見る限りハードボイルドとはやせ我慢と見つけたり。
余談
ラストシーンでもそうであるがイルザはどちらを愛しているのか自分でも戸惑っている。バーグマンは監督に「私はどちらを愛しているのですか」と聞いた。マイケル・カーチスは「まだ脚本が出来上がっていないのでわからない」と答えた。そんな状況で撮影が始まっている。無茶苦茶な話である。そんなわけでバーグマンはこの映画を晩年まで見ることがなかった。駄作に決まっていると思ったからだ。ところが見てビックりした「あら意外といいじゃない」映画は出来上がるまでわからないという。
昔の恋人が自分の店に来た時の僕の答えをまだ聞いていない・・・・・
「そんな昔の事は、覚えちゃいないぜ」
ハードボイルドだろう・・・・・