三連単

2018.6.23 本山禎朗special trio
本山禎朗(p)米木康志(b)西村匠平(ds)
 このトリオは、憧れのベイシスト米木との共演を切望していた西村匠平の念願が叶ったという意味でspecialである。また中央には西村と同齢の本山が配されることとなった。これは今後のジャズ界を背負うだろう若手と、背負って来たそして今なお背負い続けている実力者の共同事業だ。東京のジャズシーンで名を成した演奏家は、野生動物並みの生き残り戦を乗り越えてきた人たちである。彼らと共演すると地域を主戦場としている演奏家は、普段になく力が引き出されるとよく言われる。地域が東京の後塵を拝するために存在しているのではないことを証明するために、札幌の若手ミュージシャンに同士よって夫々の力を引き出し合う陣形を組んで欲しいと願っている。本山を含め、何人かは既に願いを託されるところに来ているのだ。演奏曲は「ローラ」、「リプシー」、「ワルツ・フォー・ルース」、「マッシュルーム・キッド」、「バプリシチィー」、「アウト・オブ・ドリーム」、「星影のステラ」、「サテン・ドール」その他Wショーター、Rカークの作品。
  この日は月曜日にも関わらず、西村の念願がここでも叶ったのか“押すな押すな”の盛況。これを横文字に置き換えると「Don’t Push」。西村、これでいいよな!
2018.6.27  松原衣里 爆発ボイス
松原衣里(vo)南山雅樹(p)柳真也(b)伊藤宏樹(ds)
 松原、2年ぶりのステージとなる。前回、初聴きの印象は、何といってもその声量だ。その野太い声質を聴いたら、チェット・ベイカーなら背を向けてしまうのではないか。“関西の実力派シンガー”といわれると大体は“コテコテ感”が咄嗟のイメージになるだろう。だが筆者的には、ロバータ・フラックが関西のおばちゃんだったら松原のような個性になると思う。潤う情緒とパワーの一体性においてである。また聴く機会があると思うので、その時は堂々たる優しさを兼ね備えた爆発ボイスを一聴あれ。Killing me softly~な気分になれること請け合いだ。曲は「I just found out about love to you」、「It never entered my mind」、「Day by day」、「Come rain or come shine」、「It don’t mean a thing」、「Lullaby of Birdland」、「My little baby」、「Just in time」「Yesterday」、「エリ’s blues」、「My funny valentine」。
2018.7.3 ザ・グレイテスト 中本マリ
中本マリ(vo)大口純一郎(p)米木康志(b)
マリさんクラスになると、歌が人生そのものである。人生が歌わせていると言ってもいい。多くの者は年とともに勢いを失う宿命にあるが、マリさんには黄昏に浸る晩年のような様子は窺われない。訊いてみたのだが、今現在の自分として最も声を出せるのだという。そのことを裏打ちするように、ライブでは殆どナマ声で歌っていた。バックもナマ音なので場内は人間のみの気配に包まれていた。全編、マリさんがイニシアチブを握って進行していくのだが、後ろの的確かつ自由なサポートも見事中の見事だ。札幌の重鎮ピアニストが聴きに来ていて“涙が止まらない”と言っていた。他言は無用、この一言をザ・グレイテスト中本マリのライブ・レポートの結論とする。曲は「Star dust」、「On green dolphin street」、「Days of Wine & Roses」、「I got it bad and that ain’t good」、「I could write a book」、「セントルイスから来た人」、「Skylark」、「Autumn leaves」、「This autumn」、「My favorite things」、「Georgia on my mind」「Sunflower」、「Just friends」、「feeling good」、「Love for sale」。
これは筆者が気づいている以上の素晴らしいライブだったのではないか?それが何なのか?このライブを電気の要らない無人島に持って行って“ナマ”で確かめたいものだ。
(M・Flanagan)