ホテルから琥珀に向かう道すがら50年前の記憶が蘇ってきた。このセンター街の中華料理店が入っている何処かのビルの会議室で第一志望の企業の最終面接を受けに札幌から出てきたことを想い出した。
琥珀にはメンバーの入り時間より早めに入らせてもらった。素敵な店であった。スタッフの方から「二日間よろしくお願いします」と挨拶された。それはこちらの言うセリフである。ベースの三嶋が出迎えてくれた。今回の企画の橋渡しをしてくれた人物である。ミュージシャンのブッキングも丈造と二人でその労をとってくれた。公式サイトに載っているミュージシャンは20人であるが顔を出してくれたミュージシャンは他に10人はくだらない。そのミュージシャンにも全て演奏機会を作ってくれた。もう満漢全席状態である。トップバッターはお世話人二人が入っているトリオで口火が切られた。こちらがこそばゆくなる挨拶であったがもうジーンと来ているのが分かった。初日二番手は珠也、井上銘、古木佳祐のトリオである。珠也が僕とlazyとの関係を割と長めに喋って紹介してくれた。もう持ちネタになっているがドアを蹴破ったエピソードも織り込んでいた。そのサウンドは俄か組み合わせのサウンドではなかった。張り詰めた空気感が支配していた。三嶋もいつもの琥珀の雰囲気とは違います・・・と教えてくれた。この後も豪華組み合わせが続くのであるが個別のサウンドを全て記憶しているわけではない。気は張っているが振舞い酒を受けているうちに記憶が耳から駄々洩れしてしまった。ベースは三嶋が持ち込んでくれたがその楽器を米木、俊也、古木、楠井が弾く。当然サウンドが皆違う。米木が弾いている時若手ベーシスト達が話しているのが聞こえた。米木の沈み込むサウンドは日本ベース界の謎である・・・という意見であった。本業の物言いは面白い。この日特別なお客さんが来てくれることになっていた。lazyに来たことが有るお客さんなら知っている事であるがステージの正面に臼庭潤がここで録音してくれたCDのジャケット写真を飾ってある。昨年13回忌を迎えた。毎年命日に妹さんが未発表音源や動画をUPしている。臼庭が亡くなってから妹さんはライブハウスから足が遠のいたという。今回僕が上京すると言う事で臼庭の盟友珠也が琥珀に来ることを勧めてくれた。妹さんは臼庭の写真をもって琥珀を訪ねてくれた。カウンターに立てかけられた臼庭の写真を眺めながらステージの音を聴き続けた。終電で帰るには楽しい時間が短すぎると言う事で大勢始発まで残ってくれた。勿論僕も朝まで付き合う。逆に僕が残ると皆帰れないのではとそこそこの時間・・・といっても5時は過ぎていたと思う・・・に失礼した。ホテルに帰った時携帯が無いことに気づく。拙い・・・酔ってはいるが雪のない道路なら100倍速く歩ける。急いで琥珀に戻る。幸い店はまだ開いていた。スタッフと柳沼がまだいた。誰かが携帯を鳴らしてくれてどこからか兎に角携帯は出てきた。柳沼に始発待ちか…と聞くと財布がなくて帰られないという。そういえば携帯を探す時見慣れないものがポケットから出てきた。柳沼の財布であった。胸ポケットからこっそり盗み出す技術は持ち合わせていないのでテーブルにあった財布を自分のものと思ってしまったのだと思う。多分。次の日「本当にお前の財布か証明しろ」と絡んだと聞かされた。24条ではないので飲み過ぎは良くない。窃盗犯にならなくて本当に良かったと思う。柳沼の良識に感謝したい。

財布泥棒と被害者
