男と女

「男と女」
「男と女の詩」
「男と女の嘘つきな関係」
「男と女 アナザーストーリー」
男と女だらけである。すべてフランスの監督クロード・ルルーシュの監督作品だ。原題は必ずしも男と女が入っているわけではないがこの場合いの邦題は意味あるもののなっている。
最近「男と女 アナザーストーリー」を見た。
男は窃盗犯、女はクラブシンガー。同じ記憶が無くなる病気に悩まされている。その二人がモロッコで出会いそして別れる。その二人を取り巻く男と女。そして彼ら彼女らの愛憎関係も絡めて人間関係の叙情詩を紡ぎあげていく。それをルルーシュがフランス語のくぐもった鼻母音の様な儚い淡い映像、ある時は南仏の抜けるような明るい映像と場面を人の心変わりのように切り替えていく。ため息が出るほど美しい。そしてこの映画には実に洒落た隠し味が使われている。
前三作へのオマージュになっていることだ。それはシーン設定、セリフ、配役にも及びエスプリに満ちている。
美人だが洒落もわかるスナックのお姉さんに酒の相手をしてもらっている感じだ。
そしてルルーシュとヒッチコックの関係が分かったのもうれしかった。主役に「ヒッチコック」と言わせる場面があるのだがそのシーンはヒッチコックの「北北西に進路を取れ」の1シーンだ。そこで気が付く宝石泥棒に入るシーンもヒッチコックの「泥棒成金」だ。
これは僕の推測だがロケ地が同じモロッコになっているのもヒッチコックの「知りすぎた男」を意識しているのではないか。「知りすぎた男」と記憶喪失の男女の対比。もしそうだとすればips細胞発見くらいの大ニュースかもしれない。
やはりヒッチコックは見なくてはならないし、チャーリー・パーカーは聴かなくてはならない。
もし時間のある方は先の順番で全作見てもらいたい。ただダイ・ハードやミッションインポッシブルが大好きと言う人には決してお勧めしない。

男と女のストーリには2,3種類の話しかない。それが時として残酷に繰り返される

これは余談だが最初の「男と女」が封切られて時のことははっきり覚えている。中学生だった。映画館にはまだ特大の看板がかかっていた。主演のJトライテニアンとAエーメの今にも口と口が届きそうな絵であった。その下に「恋人同士で見たら帰りには必ずキスをするでしょう。」とキャッチコピーがあった。
「わー。見てぇー」と思った。TMちゃん誘ってみようかと思ったもののそんな勇気はなくその時は見逃した。
初めて見たのは大学に入ってからで、一人で見に行った。