辛酸震災詳細日記 その8

9月9日
自宅から1kmの距離のところの道路が陥没している。地震の後気持ちの悪いほどの晴天続きだ。抜けるほどの青い空にアップリケ刺繡の様な積乱雲が所々に張り付いている。考えてみると地震の前は台風が来ていたのだ。毎日飲んでいるわけではないのだがその日も飲んでいた。風が強くなっえ来たなあと思った瞬間、「バーン」という割れる音がした。店の行灯が片面飛んで中の蛍光管が道路に飛び散っていた。見ないことにする。覆水盆に返らず。別れた彼女は戻っちゃ来ない。イスラム教では皿が割れた時はその皿は割れる運命にあったと考える。僕はイスラム教信者ではないが、なんとなくわかる。
天災が続いたからなのか、僕がある年齢になったからなのか分からないが、宗教心が芽生えてきた。キリスト教、浄土真宗、ヒンズー教とかの特定の組織的な会派ではなく、もっと土着的な思いである。自然を畏れ、自然を敬う。
古今亭志ん生の落語の枕でこんな話がある。
「長生きしようたって、思うようにはならない。人には寿命ってものがあるんですから。酒もたばこもやめて、健康になったと思ったら,太っちゃって、車にぶつかちゃ何にもならない」
自転車に乗れる好天と健康に感謝しつつ今日も食事を配達するのである。