
ハクエイ・キム(p)杉本智一(b)本田珠也(ds)
結成4年にして初作、これはBCG待望の「TIME IS OUR SIDE」リリース記念ライブである。ほぼアルバム収録曲を中心に進めるとアナウンスされ、シメタと思った。昨年来、繰り返し聴いていたので、アルバムと初日そして二日目と三通りを追っていけることになった。その甲斐あってかBCGによる三種混合を大いに楽しめたのである。このライブをアルバム・タイトルになぞらえれば、「時は我に味方せり」ということになる。アルバムの楽曲はハクエイの手によるもので、一曲だけ杉本が提供している。二日目にファン・サービスでスタンダードが混ざることを恐れていたが、そうならなくて良かった。これによって同一曲の似て非なるものを存分に堪能出来た。このバンドは我々が漠然とイメージするピアノ・トリオとは随分異なっている。インタープレイの様相から、ブレーク・スルーしたくて堪らないジャズ・トリオって感じがする。全般的にバンドの体幹たるベースがアルバムより割り増し強化されていて、杉本は中央の位置を譲らないというふうであった。CDにはライナーが付されてないので、演奏曲の断片を申し上げる。まず「Ladders」、そんじょそこらの揺さぶりには動じない強度のある演奏で、外されてしまうような卑怯さは一切なしだ。全てが荒ぶるといったものではなく、バラードの「Your Sky」は淀みを受け付けない心情を基調としているが、後半テンポ・アップする流れは筆者のお気に入りだ。続けてスロー系を紹介すると、杉本が少年時代に出会った隠れキリシタンにまつわる図書の思い出を捉え返した厳粛でストーリー性のある「Rosario」、ハクエイの亡き父に捧げた「Yuse」などは固い岩をも怯ませるかのようなもので強く魅れかれる。このバンドの演奏は豪放なものと静謐なものとを絶妙に調和させているが、それを1曲に纏めたのが「The Calm Before The Storm」だ。”嵐の前の静けさ”が映像を伴なって伝わってくる力演だ。そしてアルバムとライブ共通してホール・ロッタ・ラブなのは、ライブのハイライトをなす「Construction Site(工事現場)」だ。これは珠也にしかできないプレイを想定して作ったのだと紹介された。三者の激突は解体工程が発する騒々しさを伴なう様子を重層的に描いていく。それに区切りがつくとドンピシャで建造への結束行程に突き進む、それが第一の聴きどころだ。特に二日目では、いよいよクライマックスに至ったところで、「あれっ、終わったの?」、場内は8拍分ほどのサイレンス、と次の瞬間に弾丸ライナーの爆動ドラムが始動し、一気に場内の喝采を引き出して見せたところが第二の聴きどころだ。この二段構えの展開により晴れて竣工完了となった。この曲この演奏は、ハクエイのプログレ感覚が際立ったものになっていると言ってよく、会心の遊泳体験が現実のものとなったのである。なおアルバム収録外から最近の作品「Echoes Of Conversation」が封切りされた。改めてハクエイの旋律はどこの誰にも属していないと感ずる。両日を通じた実感を投げやり気味に言わせてもらう。ライブはB気合いだ!C気合いだ!G気合いだ! BCGとは何の略なのか知らなかったので尋ねてみた。本=Book 杉=Cedar キム=Goldなのだそうである。1月後半ではあったがギュっと締まった密度の濃い演奏は、年始の目覚めとなった。完全燃焼できたわい。
真冬の天候は甚だ不安定だ。ライブの翌日は大荒れになりそうな予報が出ていた。一難を逃れる思いを込めて、マイナーで終わるところ急遽メジャーに切り替えた曲があった。もちろん”嵐の前の静けさ”である。その願い空しく現実は、どマイナーに帰してしまった。これに懲りずレイジーへの次なる「出張 BCG」に期待している。最後にこの「TIME IS OUR SIDE」は躊躇なくお薦めできるアルバムなので、是非とも手にして頂きたい。万一意にそぐわない場合は、あのドアを無断で蹴っ飛ばすことを許可する×××。(M・Flanagan)
