死んだあなたに、「とりつくしま係」が問いかける。この世に未練はありませんかあるなら何かモノになって戻ることができますよ・・・・・・・と。人はいろいろなものになって戻ってくる。そんな切なくて暖かさがにじみでている東直子の短編小説集が「とりつくしま」だ。
その中の「日記」の一部分をラジオ朗読で聞いた。涙が出そうになった。
僕は妻希美子の日記になって戻ってくる。日記は僕への手紙そのものであった。希美子の心のそばにいられることを喜んでいた。ところがある日恋人がいることがつづられる。僕が亡くなってから支えてくれた人らしい。その人と一緒になるらしい。
ここから原文のまま。
そのことを、今日決めました。今まで見守ってくれてありがとう。光さんへのこの日記、今日で最後にします。新しい家には持っていけないので明日の朝庭で焼いてしまいますね。
僕は驚いた。
余りのショックでしばらく何も考えられなくなった。
中略
朝の光を存分に浴びた希美子はとてもきれいだ。迷いを吹っ切って、凛としている。希美子は僕を手に取るとじっと見つめた。そして、眉を微かに下げてほほ笑んだ。
僕は永遠に君の最初の夫だよ。
希美子にそう言いたかった。
僕は希美子に抱きしめられた。
抱きしめられたまま、希美子が日記を書いていた部屋から初めて出て、庭に降りた。庭には僕たちの手紙を収めたあの箱が置いてあった。
希美子は、箱この結んでいるリボンの下に僕を挟み込んだ。僕の胸に赤い十字が」飾られた。空を見上げていると、希美子の手から枯葉がさわさわと大量に降ってきた。
枯葉は、しばらくすると赤い炎に変わった。希美子が火をつけたのだ。
炎はすぐに僕に燃え移り、リボンを焼き払った。解放された僕は、一枚一枚めくれ上がりながら燃えていった。
僕の下では僕らの手紙が燃えている。僕と君が交わしたたくさんの言葉が燃えていく。煙になっていく。
炎がゆれている。ゆれている。
僕は遠のいていく意識の中で、炎向こうにいるへ最後の言葉を思った。
おめでとう。
「とりつくしま」東直子著 ちくま文庫より
蛇足
良い話で終わらせておけばいいものをパーティジョークを思い出した。
マリリン・モンロー主演映画で「7年目の浮気」というのがある。歩道でスカートがめくれ上がるあの有名なシーンがある映画だ。その映画の中でモンローが洒落たセリフを言っている。
「私の部屋はクーラーがないのでパンテイを冷蔵庫で冷やしてあるの」
その映画を見ていた男Mはあのパンティになりたいと思った。朝起きるとその男Mはパンティに変身していた。
冷蔵庫は少し寒いがモンローが帰ってくるまでと思い辛抱強く待ち続けた。
扉が開いたモンローではなかった。風采の上がらない中年男であった。コソ泥だ。食物を失敬しようと思ったのであろう。その男は見逃してくれるものと思っていたが、コソ泥には女装癖があったのだ。Mはコソ泥のぽけっとにねじこまれた。
